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ノルウェー、フィヨルドの風に吹かれて

港町ベルゲン

 2012年5月、ノルウェーの画家エドワルド・ムンクの「叫び」が、絵画史上最高額の1億1990万ドル(約96億1600万円)で落札された。橋の上で耳をふさいでおびえる人物の表情が印象的なムンクの代表作である。背景に描かれた血のような赤い雲、ノルウェーの自然を代表する地形フィヨルドの青黒く沈んだ暗い色も、見る者を不安な気持ちにさせる。ただムンクは日記に「画面がどれだけ自然に似ているかは、何の意味も持たない」と書いている。ならば、本来のフィヨルドはどのような風景なのだろう。フィヨルド目当てに世界中から観光客が訪れる夏を前に、ノルウェーを訪れた。(フリージャーナリスト・横井弘海)

 フィヨルド観光の拠点の一つ、ベルゲンは港を中心に発展した、かつてのノルウェーの首都である。人口はわずか24万人だが、ノルウェーでは第二の都市だ。港の背後に控える山の針葉樹の緑と赤い三角屋根の家々のコントラストが鮮やかに見えるのは、空気が澄んでいるせいだろうか。静かな石畳の通りには、中をのぞいてみたくなるような個性的な店が幾つもある。魚市場のある港周辺は活気にあふれる。

 港に面した一角「ブリッゲン(Bryggen)」は、17世紀半ばまで、ドイツ商人のハンザ同盟が外国に置いた「外部ハンザ」の一つとして隆盛を極めた名残である。交易の中心となった干しダラを保管する倉庫、貿易商人の事務所や住居などに使われていた木造の建築物は、何度となく火災に遭ったり、修復が繰り返されたりしているが、往時の様子を残す61軒が保存され、世界遺産に指定されている。岸壁に沿って、緋色、黄土色、白色、茶色などカラフルにペイントされた三角屋根の建物の前には多くの観光客が集まり、記念撮影に夢中だ。

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