領土問題、歴史認識問題をめぐって大きくきしみ、好転の兆しが見えない日中、日韓関係。安倍政権は解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に突き進み、日本の外交・安保の進路は「転機」を迎えつつある。在任中、歴史問題に取り組んだ村山富市元首相に、現状と今後について見解を聞いた。
―政界引退からだいぶたつが、最近はどう過ごしているのか。
もう歳だし、一度引っ込んだ人間がしゃしゃり出るようなことはしたくないんだけど、少しでもお役に立てるなら、させてもらおうかと…。安倍政権になってから、(日本の植民地支配と侵略を謝罪した)村山談話が俎上(そじょう)に載るようになった。そんなこと、僕は想像もしなかったけどね。それで、いろいろ声が掛かるようになって、出掛けていって講演をしたりしている。
―最近の日本の政治・社会情勢をどう見るか。
憲法問題にしても、集団的自衛権の問題にしても、国会が頼りにならない。これでいいんじゃろかという危機感が強いね。何でも押し通そうとする自民党に対し、野党は一本にまとまって抵抗する力がない。発言はあくまで散発的で、大きな力になっていない。
自民党もかつては派閥を無視しては政権を維持できなかったが、今は派閥の影響力があまりない。小選挙区制導入と政党助成金によって、党執行部が全ての権力を握るようになり、政権と党執行部が一体となれば、何も怖いものがない。安倍晋三首相から「私が最高責任者」との発言が出るのも、そういう背景がある。
新着
会員限定