オルヘイユ・ヴェクのお勧めは、アグリペンションだけでない。13世紀から修道士の修行の場となっている、6つの岩窟修道院がある。
ラウト川沿いの岸壁の上を進むと、崖に掘られた修道院にたどり着く。貝殻が集積した化石でできた岩のため、なんとか人力で掘り進めることができたのだろう。内部は、礼拝堂と穴を掘った修道士の寝室「壁龕(へきがん)」だけしかない質素な作りだ。
旧ソ連時代、修道院は解散を命じられ、誰も住んでいなかったが、1997年からここで1人の修道士が修行をするようになった。修道院には電気もトイレもなく、食料は近所の教会の人が運んでくれるという。今も年老いた修道士が、祈りの日々と送っている。
「修道士さんは1日中祈りを捧げていますので、話しかけないでください」と、ヤナさんが我々に注意を促した。彼女も説明を終えた後は、スカーフで髪を覆い、イコンの前のロウソクに火を灯し、静かに祈っていた。
他の旧ソ連諸国と同じようにモルドバでも、荒れ果てたままだったり、改修中だったりする教会や修道院が少なくない。しかし、教会の見栄えとは関係なく、モルドバでは多くの人々が信仰をもって生活をしていることが行く先々で感じられた。
農業以外の基幹産業がないために経済が脆弱とされるが、おだやかで明るいモルドバの人々に出会うたび、実は日本より豊かなのではないかと感じた。
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