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老後破産回避へインフレに負けない家計管理◆金融資産二極化の現実 令和の新社会人へ「お金のススメ」(27)
 マネーのプロが教える初めの一歩

2024年07月08日13時00分

60代の金融資産保有の分布

60代の金融資産保有の分布

 日本はデフレ下でモノやサービスの値段が上がらない状況から、何もかも値上がりするインフレの時代に入りました。特に影響を受けるのがリタイアした高齢者で、老後破産におびえて暮らす人は少なくありません。人生100年時代。お金に困らない人生後半を送るために、20代からインフレに負けない家計管理術を身に付け、働き方と資産運用を考えましょう。

 ◇60代の4人に1人は「金融資産ゼロ」

 金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(総世帯)2023年」資料によると、60代の金融資産保有額は平均1862万円。2000万円近い額で、多くの人にとって老後は安泰のように見えます。しかしこれはあくまでも平均値。より実態に近いといわれる中央値(データを小さい順に並べて真ん中に来る値)だと530万円です。

 詳細を見ると、0円が24.6%、100万円未満が6.6%。4人に1人は金融資産が全くなく、100万円未満の人を含めると、約3人に1人が全く、あるいはほとんど金融資産を持っていないという調査結果になりました。一方、2000万円以上3000万円未満が9.1%、3000万円以上が19.0%と、2000万円以上の世帯は3割近くを占めています。

 60代は老後のためにある程度の蓄えがないと不安な年代ですが、このように金融資産額が二極化しているのが現実です。

 消費者物価指数の上昇率はここしばらく前年比2%を超えています。現在100万円で購入できる商品が1年後に102万円に値上がりする計算です。裏を返せば、お金の価値がそれだけ目減りしています。金融資産がゼロまたはほとんどない人は、公的年金に頼ることになりますが、国民年金の平均受給月額は5万6000円程度。老後の豊かな生活に十分とは言えません。

 同委員会の調査では、「老後の生活が心配である」と答えた20代の割合は74.9%。これは60代(74.5%)、70代(67.2%)よりも高く、若年層の老後不安が強いことを示しています。

 ◇「カート保留」の節約術

 インフレはまだまだ続きそうで、どのような状況にも対応できる家計管理術を身に付けましょう。まずは支出を見直すのが基本です。

 効果的なのは固定費の削減。代表的なのは住居費、光熱費、民間保険料、通信費、サブスク代、ジムの会費など毎月ほぼ定額で支払っているものです。固定費は一度減らせば、節約効果が続きますのでおすすめです。

 家計簿アプリで管理するのもいいでしょう。20代のOさんは家計簿アプリを使って日々の生活費を管理し、食費節約と健康のため、勤め先に毎日手作りお弁当を持参するそうです。前の晩のおかずの残りをアレンジするので負担にはならないとのこと。

 同じく20代のKさんは、欲しいものがあっても衝動買いせず、しばらくネットのカートに保留。数カ月たってもまだ必要と思えば購入するようにしているといいます。

 英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンの第2法則によると、「支出の額は収入の額を満たすまで膨張する」と言われています。ベースアップで給料がインフレ率以上に上がっても、その分支出していたら、貯蓄や投資の余裕は生まれません。まずは無駄な固定費や支出を見直しましょう。

老後の生活に対するイメージ(20代)

老後の生活に対するイメージ(20代)

 ◇転職より副業

 終身雇用や年功序列といった日本型雇用が崩壊しつつあると言われて久しく、25~29歳の22.6%が「機会があれば転職したい」(厚生労働省2020年転職者実態調査)と考えているとのデータもあります。キャリアアップの転職で収入を増やしたいと思っている人も多いと思いますが、経験や知識の面ですぐには難しい場合もあるでしょう。

 しかし本業以外の収入を得る副業ならば、始められるかもしれません。副業OKの会社は増えてきました。まずは得意分野、興味のあることを副業にして収入アップを図るのも一案です。

 20代のHさんは文章を書くのが得意で、ライターの副業をしているとのこと。副業収入の2割を近い将来買うモノのために使うお金、1割を当面使う予定がないお金として振り分けて、先取り貯蓄をしているそうです。

 副業を行うと会社以外の人脈もでき、転職や起業のきっかけになる可能性もあります。ただし、「簡単に稼げる」とうたった詐欺まがいのSNS情報には気を付けてください。

 ◇老後のためのiDeCo

 家計の支出を見直したり、副業で得たりしたお金は、資産運用で増やしていきましょう。日銀のマイナス金利解除で、4月から多くの銀行で預金金利が上がりましたが、メガバンクの1年物定期預金金利は0.025%。先ほどの100万円で考えると、1年間預けても増えるお金は250円(税引き前)です。10年物定期でも利息は0.3%(税引き前で3000円)。2万円の目減りを強いられる現在の2%を超える物価上昇率には、全く太刀打ちできません。

 このため貯蓄だけでなく、投資でも運用します。投資にはリスクがありますが、これまでの連載でお伝えしたように、「長期・積立・分散」という投資の王道を守れば、効率的に資産を増やすことは十分可能です。

 NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など税金が優遇されている制度を利用するのがよいでしょう。

 iDeCoは老後のための年金制度です。NISAと同じく運用中の利益に税金がかからないだけではなく、拠出金額が全額所得控除となり、所得税、住民税が軽減されます。また受け取るときには退職所得控除や公的年金等控除などの税金がおまけされる制度が適用されます。退職金が減る傾向にある中、60歳以降でないと原則引き出せないiDeCoは、老後破産を回避するためにもおすすめしたい制度です。

 デフレの時代には現状維持を続けていれば、老後も生活は何とかなりました。しかし時代は変わってきています。今までと同じような働き方、暮らし方、お金との付き合い方では、人生後半に厳しい生活を余儀なくされる可能性があります。

 まだ先のことだからいつか考えればいいやと思っていても、あっという間に月日は流れていくもの。インフレ時代に二極化する老後、あなたはどちらを選びますか。(ファイナンシャルプランナー 樋口文子)

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