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定期預金、iDeCoでお得に 令和の新社会人へ「お金のススメ」(22)
 マネーのプロが教える初めの一歩

2023年09月22日

【図解】日本の年金制度

【図解】日本の年金制度

 老後の資金を準備しながら、税金が軽くなる「iDeCo(イデコ)」。「よく聞くけど、投資でしょ。損はしたくないな」とためらっていませんか。実は、元本保証のある定期預金にもiDeCoは使えます。お金を長期運用できる20代の会社員にとっては、早く始めれば始めるほどお得な制度なのです。

 ◇利用者300万人超え

 「iDeCoって何?」から始めましょう。正式名称は「個人型確定拠出年金」。国民全員が加入する公的年金とは異なり、入るかどうか個人に任されている年金です。2001年に始まり、23年9月時点で加入者が300万人を突破しました。関心は徐々に高まっています。

 日本の年金制度は、よく建物に例えられます。1階部分が20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金(基礎年金)、2階部分は会社員や公務員が加入する厚生年金保険。ここまでが公的年金です。

 3階部分にあるのが、各企業が任意で設ける企業年金(企業型確定拠出年金や確定給付企業年金。ない会社もあります)と、iDeCoです。大きな違いは誰が運用資金を出すかということ。企業年金の掛け金(運用の元手になるお金)は原則として事業主が拠出します。一方、iDeCoは掛け金を個人が払います。会社員だけでなく、公務員、自営業者、専業主婦などが最長65歳まで入れます。

 ◇三つの税金「おまけ」

 iDeCoをお薦めする理由は、三つの税制優遇、つまり税金の「おまけ」があることです。税制優遇のある投資制度としてNISA(少額投資非課税制度)と比べながら見ていきましょう。

 メリットの一つ目は、掛け金の全額所得控除です。会社員の皆さんは給与から天引きされて、所得税や住民税を払っています。その税金が減るのです。所得控除とは、税金を計算する際のベースとなる課税所得額から差し引きできるもので、多ければ多いほど、払う税金が少なくなります。

 例えば課税所得額400万円(税率20%)の会社員で考えてみましょう。通常は所得税と住民税は合わせて77万2500円。iDeCoで毎月1万円、年間12万円拠出すると、税金は73万6500円となり、3万6000円少なくなります。月2万円、年24万円なら、年7万2000円税金が軽減されます。NISAにはない税制優遇制度です。

 二つ目は、運用益が非課税です。通常、投資信託の配当金や譲渡益、定期預金の利息には約20%の税金がかかります。10万円の運用益なら約2万円が税金で引かれます。NISAもそうですが、iDeCo運用益に税金はかかりません。

 三つ目は、受給開始後も税制優遇があることです。年金であるiDeCoは60歳以降、受け取ることができます。退職所得控除や公的年金等控除の対象です。年金ではないNISAには、関係ありません。

 ◇定期預金も「アリ」

 「iDeCoのメリットは分かったけど、絶対に元本が減るリスクを取りたくない」という人は、定期預金を選択するのも「アリ」かもしれません。

【図解】毎月1万円を定期預金で1年間積み立てた場合の比較

【図解】毎月1万円を定期預金で1年間積み立てた場合の比較

 メガバンクの定期預金金利は年0.002%で、利息はほとんどつきません。毎月1万円、1年間で計12万円預けて付く利息は約2.4円(税引き前)。ここから約20%の税金が引かれると、約2円です。

 iDeCoであれば、この税金がかからないだけでなく、全額所得控除によるメリットを受けられます。前述の例を再び見てみましょう。iDeCoに定期預金として毎月1万円(年12万円)掛け金を拠出すると、払う税金は年間3万6000円少なくなります。月2万円(年24万円)なら、税金は年7万2000円軽くなります。この恩恵がiDeCoを受け取れる60歳まで続きます。

 iDeCo口座保有による手数料(ネット証券・積み立て型で毎月171円)を差し引いても、始める価値は大いにあるでしょう。

 もちろんある程度リスクを取れるなら、運用期間の長い20代の皆さんは、世界の株価指数に連動する成果を目指す「全世界株式インデックスファンド」などの投資信託で運用するのもよいでしょう。短期の浮き沈みはあっても、長期なら運用益を大きくすることも期待できます。例えば毎月2万円、40年間拠出した場合、元本960万円に対して利回り3%の場合は40年後に1800万円以上。5%の場合は約3000万円になっています。

 iDeCoのやり方です。まず自分で金融機関を選び、iDeCo口座を開設します。証券会社や銀行などで開設できますが、運用商品の豊富さで見ると、ネット証券がお薦めです。口座開設手数料(2829円)と毎月の管理手数料(金融機関で異なります)がかかります。

 次に掛け金の額を決めます。職業により上限額は異なり、会社員や公務員らの第2号被保険者は2万3000~1万2000円。人事部などに問い合わせてください。掛け金は月々5000円以上から1000円単位で設定できます。事情があって中断したり、再開したりすることも可能です。そして運用商品を選びます。大きく分けて元本確保商品と元本保証のない投資信託の2種類。定期預金は元本確保商品に含まれます。

 iDeCoの税制優遇を受けるには、「年末調整」を忘れずに。「小規模企業共済等掛金控除」という項目があり、その年に払った掛け金の合計額を記入します。

 また皆さんにとってはまだ先の話ですが、積立期間(現在は最長65歳まで)が終了したら、運用したiDeCoを受給します。一時金や年金形式、併用も選べます。

 ◇途中引き出し不可に注意

 デメリットも覚えておいてください。iDeCoは老後に備えるためのものなので原則60歳まで引き出せず、急にお金が必要になっても使うことができません。掛け金は無理のない範囲で拠出しましょう。

 これはメリットでもあります。20代の皆さんにとって老後は遠い未来のことかと思いますが、必ずその日は訪れます。いつでも引き出せるお金は、ついつい使ってしまいがち。引き出せない制約があるiDeCoで、確実に老後資金を準備できるのです。

 少子高齢化が進む中、公的年金だけに頼るのは不安に思っている人も多いでしょう。終身雇用制の崩壊で退職金制度自体を廃止する企業も出てきました。人生100年時代を充実して過ごすには、iDeCoを賢く使って、自ら年金を増やす工夫が必要です。(ファイナンシャルプランナー 樋口文子)

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