2023年05月22日16時00分
【図解】クレジットカードの仕組み
社会人になり、クレジットカードを使う機会が増えていませんか。最近ではBNPL(Buy Now Pay Later)を利用する人も多くなりました。いずれも「今」買って「後」で払える便利な支払い方法ですが、よく分からないまま無計画に利用するのは禁物です。またSNSで借金を申し込んでトラブルになる例も。マネー知識のない若者が狙われています。
◇キャッシュレス化で相談1.5倍
「カードの利用明細を1年以上経過した最近になって確認したら、支払残高が約30万円もあることに気付いた。割引サービスのあるリボ払いを選択していたが、こんなに高額になっているとは思わず、どうすればいいのか」(20代男性)
「インターネットの個人間融資を利用していた知人を通じて、15万円の融資を依頼した。(中略)利息を免除してくれるというので、要望されるままに下着姿や裸の写真などを送った。しかし、融資は受けられず、こちらからの連絡にも返事が来なくなった。どうすればよいか」(30代女性)
これらは、独立行政法人国民生活センターに寄せられた相談のほんの一例です。クレジットカードの相談件数はキャッシュレス決済の普及で増加傾向にあり、2020年度は5万5127件に達しました。5年間で1.5倍です。同センターは、SNSや掲示板サイトを通じて見知らぬ人からお金を借りる「個人間融資」にも注意を促しています。
まずはクレジットカードやBNPLといった「後払い決済」の仕組みを理解しましょう。後払い決済とは、商品を受け取った後にお金を支払うことです。
新型コロナウイルスの流行以降、決済に占めるキャッシュレスの比率は増えました。経済産業省によると、2022年は19年に比べて9.2ポイント増の36.0%。8割以上がクレジットカードで、決済額は90兆円を超えています。ネット通販などの電子商取引(EC)の大半はカード決済です。2、3枚持つ人も珍しくありません。
クレジットカードは、モノやサービスの購入者、加盟店、カード会社の3者間契約です。カード会社は購入者に代わってお金を払い、後日請求します。借金をする形になるため、発行には年収等の審査があります。
カード利用で気を付けねばならないのが、手数料の有無です。代金全額を一度に払う一括払いは手数料無料。2回までの分割払いも手数料無料が多いです。
手数料がかかるのは、3回以上の分割払いとリボ(リボルビング)払いです。リボ払いは、カードで購入した代金を毎月一定額または一定率決めて残高がなくなるまで支払う方法です。毎月の利用残高に対して手数料がかかります。分割払いが支払い回数をあらかじめ決めるのに対して、リボ払いは毎月の支払額(率)を決めます。手数料はカード会社によって異なりますが、分割払いは実質年率10%以上、リボ払いは15%程度が多いです。
金融庁ホームページ「借金シミュレーター」試算結果
10万円のパソコンを買い、毎月1万円のリボ払いで支払うケースで考えてみましょう。手数料は利用残高×実質年率÷365×利用日数で計算できます。実質年率を15%とすると、最初の30日間で発生する手数料は1200円余りです。
手数料分を含める「元利定額リボ払い」だと、商品の代金支払いに充てられる元金返済分は約8800円。支払いは11回かかります。金融庁ホームページにある「借金シミュレーター」を使うと、総支払額は10万7497円。手数料分を含めない「元金定額リボ払い」では、毎月1万円以上支払うことになります。
月々の負担を減らそうと支払額を5000円にすると、完済までの期間が24カ月になり、総支払額は11万5782円になります(「元利定額リボ」)。
BNPLは、20代の若い世代中心に急速に利用者が増えています。クレジットカードの発行審査が厳しい欧米で生まれた決済方法で、カードより審査が緩く、電話番号とメールアドレスの登録だけで利用できる場合もあります。分割払いの手数料は基本的に小売店の負担です。銀行口座がなくても、コンビニで支払い可。カード情報の漏えいに不安を感じる人のニーズに応えている面もあるようです。
クレジットカードやBNPLには、購入と支払いにタイムラグがあります。計画的に利用しないと、支払時に手持ち資金がないということもあり得ます。
特に注意が必要なのは、リボ払いです。次々に買い物をすると、なかなか支払いが終わらず、高い手数料を払い続けなければなりません。また毎月の支払額を低く設定できることから、使い過ぎてしまう可能性があります。リボ払いは避けるのが賢明でしょう。
◇延滞なら「ブラックリスト」
カード代金が払えなくなると、どうなるのでしょうか。督促を無視して延滞し続けると、個人信用情報機関に登録されます(いわゆるブラックリスト)。基本的にカードは使えなくなり、新たなカードも作れません。住宅などのローン契約ができなくなる恐れもあります。家や給料などを差し押さえられ、家族や仕事を失う人もいるのです。
またカード代金を返済しようと、金利の高い消費者金融やカードローンに頼ると、借金が雪だるま式に膨らむ多重債務への転落リスクが高まります。「自己破産」に陥りかねない多重債務は絶対に避けねばなりません。相談窓口としては、日本弁護士連合会、日本司法支援センター(法テラス)、日本司法書士会連合会、成年後見センター・リーガルサポート、国民生活センター、日本クレジットカウンセリング協会などがあります。
SNS上での借金トラブルも増えています。「今すぐ現金」「レビュー投稿で現金報酬GET」「SNS拡散で商品宣伝協力金」などの文句におびき寄せられ、お金欲しさに個人情報やプライバシーを提供してしまうのです。冒頭の相談はトラブルの一例です。
多重債務回避の第一歩は、購入履歴の「見える化」です。クレジットカードと連携する家計簿アプリや、カードの利用情報をメールなどで通知するサービスが利用できます。引き落とし口座の残高確認も忘れずに。
衝動買いもやめましょう。欲しいものと必要なものは違います。しばらく間を置いて冷静になると、意外と「いらない」と思うことが多いものです。
そして、お給料が出たらまず貯蓄分を取り分けて残ったお金で生活し、欲しいものはお金をためてから購入する。この家計管理の基本を続けていれば、お金のトラブルに陥るリスクを抑えられます。キャッシュレス決済の知識(リテラシー)を身に付けて、賢く買い物をしていきましょう。(ファイナンシャルプランナー 樋口文子)
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