2022年10月18日14時00分
【図解】積み立て投資の複利効果(投資信託)
「貯蓄から投資へ」。政府は資産所得倍増プランを掲げて、預金から投資へのシフトを進めようとしています。そもそもお金はどうやって増えていくのでしょうか。その謎を解く鍵が、「複利」です。あの天才物理学者が「人類最大の発明」と驚いた複利を知らずして、お金のことを語ることはできません。知る人はお金で笑い、知らない人は泣きを見る。それが複利なのです。
◇知っている人は複利で稼ぐ
「複利は人類最大の発明。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」。相対性理論で有名なアインシュタイン博士が残したとされる有名な言葉です。マネーセミナーなどで引用されることもあるので、もしかしたら聞いたことがある人もいるかもしれません。天才の称号がふさわしい物理学の大家も注目した「複利」の何がすごいのでしょうか。
複利とは、利息(利子)に関する計算方法の一つです。対する言葉として、単利があります。例えば、100万円を年利3%で3年間、銀行に預けたと仮定して説明しましょう。
単利の場合は、預け入れた100万円の元本(元金)についてのみ利息が付くので、1年目の利息は3万円で元本と利子を合わせて103万円。2年目、3年目も元本は100万円のまま変わらず、利子がそれぞれ3万円で、3年間の元利合計は109万円です。
一方、複利の場合は一定期間ごとに支払われる利息も元本に含めて次の利息の計算をします。1年目は100万円の3%で元利合計103万円と、単利と変わりません。しかし2年目は103万円が元本となり、それに対する3%なので、元利合計は106万900円です。3年目の元本は106万900円となり、3%の利息が付いて合計は109万2727円です。
元本に対する1年当たりの収益の割合を「利回り」といいますが、事例の利回りを比較すると、複利の3.0909%が単利の3%を上回っています。運用期間が長くなればなるほど、雪だるま式に利回りが増えていくのです。
◇預貯金倍増まで3万6000年
バブル経済崩壊に伴う金融緩和の連続で預貯金金利がほぼゼロになって四半世紀以上ですが、かつて日本にも高金利の時代がありました。1980年代初めには定額郵便貯金(10年満期)の利回りが10%を超えていたのです。新社会人の祖父母世代が現役としてバリバリ働いていた時代で、預貯金の複利効果を実感できました。
しかし現在はメガバンクの普通預金金利は0.001%、定期預金金利でも0.002%。後で説明しますが、この金利で預金を「倍増」するには何と、定期で3万6000年かかります。いくら若い皆さんでも、生きているうちに預貯金だけで資産を倍増するのは不可能です。そこで代替策として、複利効果を生かした「投資」が考えられるのです。
株式や債券、投資信託、上場投資信託(ETF)、上場不動産投資信託(REIT)などへの投資が考えられますが、預貯金と違って元本保証はなく、利回りは市場価格に左右されます。マネー初心者の新社会人の皆さんは、生活費半年から1年分の資金や近い将来予定している支出等は元本保証のある預貯金等で貯蓄しましょう。そして当分使う予定のない資金を投資に回す、中でも比較的リスクの低い投資信託から始めてみるのがよいでしょう。その場合、少額投資非課税制度(NISA)の「つみたてNISA」の対象となる投資信託は、初心者でも成功しやすい長期・積立・分散投資に適した商品が厳選されているだけでなく、複利効果も狙っています。
つみたてNISAで投資する場合の複利効果とは何でしょうか。預貯金と異なり、投資信託に利息は付きません。投資信託は運用成績が良いと「分配金」が支払われることがあり、投資家が受け取る場合と、受け取らずに再投資する場合があります。そもそも分配金がなく、利益がすべて再投資に回ることもあります。つみたてNISAで購入する投資信託の多くは、分配金が頻繁に支払われることがなく、利益は基本的に再投資されています。再投資されれば運用元本が増えます。元本が増える分だけ相場上昇時の利回りは膨らみやすくなり、複利効果が期待できるのです。
【図解】長期・積立・分散投資の効果(株式)
長期投資における複利効果は小さくありません。金融庁の資料によると、2001~20年の20年間、毎月1万円の積み立て投資をした場合、日経平均株価に連動する投資信託の運用成績は元本240万円に対して約503万円。全世界株式に連動する投資信託なら約624万円でした。
日本株だけでなく、海外株という「分散」投資を含めると、利回りはより大きくなります。これはあくまで過去のことで、未来のことは分かりませんが、長期・積立・分散投資なら資産倍増は夢物語ではありません。
◇お金を借りるときは「複利効果」に気を付けよう
ここでお金が2倍になる期間が簡単に分かる算式を紹介します。「72の法則」というものです。金利が複利の場合「72÷金利≒お金が2倍になる期間」が分かります。
例えば、金利3%で運用した場合は「72÷3≒24」となるので、約24年で2倍になります。現在の定期預金金利の利率0.002%では2倍にするためにはなんと約3万6000年かかることになります。
良いことずくめに見える複利効果ですが、気を付けなければならないことがあります。それはお金を借りるときです。さきほどの算式を応用してみましょう。カードローンを使って金利12%でお金を借りた場合、「72÷12≒6」となり、全く返さないでいると、約6年で借りたお金が2倍になってしまうのです。クレジットカードのリボルビング(リボ)払いも「借金」で、金利に相当する手数料は実質年率15%前後と言われます。いずれも簡単に使えますが、慎重に利用しなければいけないということが分かります。
アインシュタインの後半の言葉「知らない人は利息を払う」は、複利に対する無関心への警告でもあるのです。投資に興味はなくても、急にお金が入り用になり、カードローンやリボ払いに手を出したくなった経験のある人は少なくないはず。身の丈を超えた借金は本人や家族の生活を破壊することがあります。
大切なお金と身を守るためにも、複利の仕組みを理解して、複利を味方につけていきましょう。(ファイナンシャルプランナー 樋口文子)
(2022年10月掲載)
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