2019年のプロ野球界に「令和の怪童」が躍り出た。セ・リーグ新人王に輝いたヤクルトの村上宗隆内野手(19)だ。2月に20歳となる若き大砲は19年シーズン、1953年の「怪童」中西太(西鉄)に並ぶ高卒2年目以内で歴代最多の36本塁打を放った。96打点はリーグ3位。一方で打率は2割3分1厘にとどまり、日本選手ワーストの184三振も。粗削りの豪快さが、いかに洗練されていくのか。さらなる飛躍が期待される20年に挑む。(時事通信運動部 前川卓也)
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◇新シーズンへ大きな目標
19年12月16日。契約更改交渉を終えた村上は「来年(20年)の目標を言います」と切り出し、「打率3割、30本塁打、100打点を達成できるように頑張りたい。守備でも失策を一つでも減らせるように努力したい」と宣言した。
シーズン中は慎重な受け答えが多かった。「目の前の試合に集中するだけ」「まだまだ課題が多いので修正していきたい」。大きな目標を公言する性格ではないだけに、その宣言には決意がにじむ。
18年に巨人の岡本和真内野手が22歳で3割、30本、100打点をマーク。村上が達成すれば、史上最年少記録だ。「そこを目標にすることで、チームに貢献することもたくさん増えてくると思う」と力を込める。
◇パワーに宿る柔軟性
決して大振りではない。小さなつむじ風が残るような鋭いスイングで右へ左へアーチをかけた。開幕から6試合続けて先発出場した19年4月4日のDeNA戦(神宮)。二回無死二塁で外に浮いた直球を逃さず、振り抜くようなスイングから放たれた打球は、左打席から逆方向の左翼席へ。19年の1号2ラン、プロ通算2号本塁打となった。
188センチ、97キロの、ずんぐりした感もある恵まれた体格。規格外のパワーだけでなく、筋肉の質を生かして広角に打ち分ける柔軟性がある。小川淳司監督(当時)がうなったのは5月6日、阪神戦(神宮)での一発だ。四回無死一塁で、マウンドは変則右腕の青柳晃洋投手。追い込まれた後、外角低めの直球を左翼席へ運んだ。「あのボールを逆方向へ打てるのは本当にすごい。持っている能力だと思う」と小川監督。村上が日頃、逆方向への快打を「自分の強み」と話していた通りだった。
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