働く母、「活躍」遠く~世界が注目、日本のマタハラ~

求められる、新ルール

 「マタハラは女性労働者のいる職場にはずっと存在していた問題だ」。マタハラ研究の第一人者で、「働く女性とマタニティ・ハラスメント」の著書がある埼玉学園大の杉浦浩美専任講師(54)はこう指摘する。

 「男性は仕事、女性は家庭」という性別分業体制は戦前から長く続いてきた。近年は女性の社会進出により、分業体制はやや揺らいではいるものの、多くの職場で女性は後から参入した「新参者」であることは確かだ。

 杉浦氏は「後から入った女性が居場所を確保するには、男性並みに働けることをアピールするしかなかった。これでは妊娠、出産は難しい。だから、これまでは子どもがいないか、いたとしても変わらずにバリバリ働けるごく一部の女性しか残れなかった」と話す。

 深刻な少子化と、出産した女性の過半数が退職する現状は、こうした職場の実態があることが一因だ。そもそもマタハラの多くは違法行為だ。労働基準法では、労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定めている。正規、非正規にかかわらず、妊婦は時間外労働を拒めるほか、出産前後の休業も認めている。

 さらに、男女雇用機会均等法は妊婦が仕事を続けやすいよう、時差通勤などさまざまな措置を盛り込んでいるほか、妊娠や出産を理由にした解雇や自主退職への誘導、降格といった不利益な取り扱いは全面的に禁じている。出産後も、子どもが満3歳までの時短勤務制度などを定めた育児・介護休業法が用意されている。

 マタハラが注目されるようになったのは、職場では新参者のため立場が弱く、こうした法律があっても我慢するか退職するしかなかった女性たちが、声を上げ始めたからだ。

 「かつて米国からセクハラの概念が入ってきて、女性労働者がいない間に男性が作り上げていた職場の文化やルールが大きく変わった。マタハラも同じこと。新たな職場のルールを作る必要がある」と杉浦氏は強調する。

 新たなルールとはどのようなものか。「男性並み」の働き方のルールは基本的に、職場に自分の体の事情も家庭の事情も持ち込まないというものだ。だが、妊娠すれば多くの場合、体調は不安定になり、体の事情を持ち込まざるを得なくなる。出産後も家庭の事情を考慮せずに働くのは至難の業だ。

 男性でも自分自身の病気や老親の介護などに直面する可能性はある。新たなルールは、誰もが事情を抱えながら働き続けられることを目指した設計が求められる。杉浦氏は「迷惑をかけないように働くのではなく、迷惑をかけ合いながら働けるような仕組みを作っていくことが重要だ」と話している。

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