「今は忙しいんだから、妊娠は考えなくていいだろう」-。当時35歳だった小酒部さやかさん(38)は、初めての妊娠を喜ぶ間もなく流産した。後から上司に報告し、1人で任されていた業務の分担を求めると、こう言われた。
契約社員として雑誌の編集を担当していた。納期に間に合わせるため、妊娠が分かっても誰にも相談せず、深夜まで働いた。職場で腹部に激痛が走り、妊娠7週目で流産した。ただ悲しかった。もう2度と経験したくない。そう強く思った。
その後も上司に業務の分担を願い出たが、状況が変わることはなかった。2回目の妊娠が分かったのは、そんなさなかだ。流産の一歩手前の状態である「切迫流産」と診断され、自宅安静となった。だが、社内で他に業務を分かる人はおらず、自宅で横になっている間もひっきりなしに会社から電話やメールが来た。
1週間ほど休んでいると、上司から「今後について話したい」と持ち掛けられた。ちょうど契約更新の時期が近づいているタイミングだった。夕方、自宅を訪れた上司は「周りに迷惑をかけた」「復帰しても会社に良いイメージが残ると思うか」などと4時間にわたり退職を勧め、最後に玄関口で契約を更新しないよう念押しして帰って行った。
仕事は何としても続けたかった。待機児童が多く、無職で保育園を見つけるのは容易ではない。その後出社し、契約の更新はできた。しかし、別の上司からは「命の重みが分かっていない」と説教された。仕事に戻ってしばらくして、再び流産した。
その後も複数の上司から「契約社員の産休・育休取得を会社が許すとは限らない」「妊娠と仕事を両方取るのは欲張り」「妊娠はあきらめろ」などと言われ続けた。
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