女性は2008年の入社以来、講師として教壇に立ってきた。忙しい毎日だったが、教える仕事にやりがいを感じていた。13年に出産。講師の立場では社内で初めて産休・育休を取得した。
産休に入る前、職場のメンバーはプレゼントを用意してくれるなど、温かく送り出してくれた。その時点で復職への不安は感じなかった。
女性の育休中に社長が交代し、風向きが変わったようだった。会社は新たに契約社員と時短正社員の就業形態を創設。給与体系も見直されたと聞いた。新社長の下、共に働いていたメンバーの大半は退社した。
女性は仕事を続けたかったが、都内の自宅周辺は待機児童であふれ、保育園の空きは見つからない。やむを得ず、夫と協力して週3日勤務の契約社員として復職した。会社は「正社員への再変更が前提」と説明したため、預け先を確保するまでの「つなぎ」のつもりだった。
その後、保育園が見つかり、女性は正社員に戻りたいと申し出た。だが、何度話し合っても会社は拒否。子どもの病気で急に休む可能性があるなど、「リスクが大きい」というのが理由だった。
女性は両親からも協力を得るため、実家の近くに引っ越しもしていた。会社に「バックアップの体制はできている」などと繰り返し訴えたが、聞き入れられなかった。
女性の給与は産休取得前の5分の1に激減。復職後は一度も教壇に立てず、パンフレットのラベル張りといった単純作業を割り当てられた。女性の後にも出産する社員は続いたが、いずれも職場復帰することなく退社した。
女性は「コストカットが狙いなのだろう。『育児中の社員はいらない』と言われたようで、裏切られた気持ちでいっぱいだ」と話し、裁判に訴える準備を進めている。
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