化粧は女性にとって、髪型や洋服と同じように欠かせない「おしゃれ」の一つ。既に古代エジプトの壁画や平安時代の絵巻物などに目元や口元を彩った女性が描かれており、その歴史は古い。
化粧をすることで、明るい気持ちになったり、シャキッと気が引き締まったりする人もいるだろう。だが、年を重ね、お出かけの回数が少なくなると、鏡に向かうことも減りがちだ。
そんな中、福祉施設などで高齢者に化粧を施し、元気になってもらおうという取り組みが注目されている。人に会いたいという積極性が出たり、認知症の人に笑顔が戻ったり、といった研究結果も出ている「化粧療法」。その取り組みを取材した。
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「きれいね」
「恥ずかしいわ」
「しわが気になるの」-。
10月下旬、東京都杉並区の社会福祉法人浴風会のケアハウスで、公益社団法人「顔と心と体研究会」による「メークボランティア」が始まると、静かだった部屋はすぐに笑顔と楽しい会話でいっぱいになった。
化粧を担当するのは、同研究会の講習を受けた主婦や学生など6人。手際よく、手のマッサージ、顔のマッサージをした後、好みの色などを聞きながら進めていく。
「今日を楽しみに待っていたの」と部屋に入ってきた90歳の女性は、メーク後、鏡で何度も自分の姿を見て微笑んでいた。また、別の90歳の女性は「いつも塗らない色を塗ってもらって、華やかになったわ。なかなか外出する機会がないけれど、きれいにしてもらったから、お茶に行ってくる」と友人を誘い、出かけた。
80代の女性は、「化粧は『化ける』と書くけど、化けることはいいことよ」とにっこり。アイシャドーや口紅の色を楽しそうに選んでいた。
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