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演劇の街ロンドンで演出家デビュー 藤田俊太郎さん

英国初演作に挑戦

 刺激的な新作が次々と生み出されるミュージカルの本場ロンドン。多彩なクリエータ―が才能を競い合うこの街で、気鋭の日本人演出家がデビューを果たした。故蜷川幸雄さんの愛弟子だった藤田俊太郎さん(38)。若手演劇人を育成する日英共同プロジェクトの第1弾として、ミュージカル「VIOLET」を現地のスタッフ、キャストと共に創作し、新風を吹き込んだ。

 かつては引きこもりだったという藤田さんは、生き方を模索する中で「演劇に救われた」と言う。人生を変えた演劇との出合い、「世界のニナガワ」から学んだこと、英国での舞台づくりなどについて聞いた。(時事通信社文化特信部・中村正子)

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 ロンドンの中心街、近くをテムズ川が流れるチャリングクロス駅の高架下。藤田さんに「VIOLET」の英国初演を託したチャリングクロス劇場は、近年発信力を高めている小劇場の一つだ。客席数は約250。大阪の梅田芸術劇場からオファーを受け、日本の若手演出家らに活躍の場を提供する共同企画を立ち上げた。

 1997年に米ニューヨークの小劇場で初演された「VIOLET」は、子ども時代に事故で顔に大きな傷を負った主人公ヴァイオレットが、テレビで見た伝道師に傷を癒やしてもらおうとバスで米南部を旅する物語。60年代の米国の公民権運動が背景にあり、ヴァイオレットが人種や宗教、価値観の違う人々との出会いを通して美の本質や新たな生き方を見いだしていく姿が、カントリー、ブルース、ゴスペルなど多彩な楽曲に乗せて描かれる。2014年にはブロードウェーでリバイバル上演され、トニー賞に4部門でノミネートされた。

 藤田さんはチャリングクロス劇場の芸術監督を務める演出家のトム・サザーランドさんらと検討を重ね、約30本の候補作の中から同作をプロジェクトの演目に選んだ。「ヴァイオレットの旅と60年代の音楽の変遷が台本の中で重なり、ロードムービーの感覚も面白かった。今のアメリカが置かれている状況を考えると、新たな価値を持ってお客さんに伝わると思った」とその理由を語る。

 ◆藤田俊太郎(ふじた・しゅんたろう) 1980年4月24日生まれ、秋田市出身。東京芸大美術学部先端芸術表現科卒。2004年にニナガワ・スタジオに入り、俳優として活動後、16年まで蜷川幸雄の演出助手を務める。主な演出作品に「ザ・ビューティフル・ゲーム」「ミュージカル手紙」「Take Me Out」「ジャージー・ボーイズ」。

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