「2メートル先に寝そべっている野生のライオンが、こちらをにらむ。私との間に柵はないのだが…」-。
南アフリカは、日常を完全に忘れてリフレッシュするのにもってこいの地と聞いたが、眼前のライオンは非日常というよりも、やはり怖い。経済が成長軌道に乗り、サッカーのワールドカップも開催した南アフリカは、大自然が今も残る地として知られる。2013年5月、野生動物が息づく自然を満喫しようと出た旅は、まさに驚きの連続だった。(時事通信社・舟橋良治)
野生との出会いは、大都会ケープタウンで早くも訪れた。空港から都心に向かうバスの窓から外に目を向けると、フラミンゴが飛んでいるではないか。「高速道路沿いの河川を改修したら、渡り鳥のフラミンゴが戻ってきた」(現地ガイド)のだという。
ケープタウンは17世紀、帆船に食料や水を供給する基地として造られた。現在の人口は400万人を数える。そんな大都会で激しく行き交う車の横をフラミンゴが優雅に飛ぶ姿は、アフリカの大地に対する期待をおのずと膨らませてくれた。
まずは、オットセイの繁殖地を見るためケープタウンの南約20キロにあるハウト湾を訪れた。繁殖地の「ドイカー島」は港から観察船で約10分という近さ。船を待つ間、みやげ物の露店を見物しながら船着場まで足を運ぶと、4~5頭のオットセイが早くも、からみあうように泳いでいた。
これは序の口。観察船で真っ青な海を気持ち良い風に吹かれながら進むと、島とは名ばかりの大きな岩に到着。船が島の岸まで10数メートルの距離に近づいても、オットセイは逃げるわけでもない。我かんせずとばかりに、寝そべっていたり、水中で戯れていたりする姿を披露してくれた。
港から10分程度の身近な場所に繁殖地があるのは、このあたりの海が餌の魚介類に事欠かないためだ。「南極から流れ込む寒流のおかげで昆布が大量に育ち、ムール貝、あわび、イセエビなどを育んでいる」(現地ガイド)。ドイカー島は、5000~6000頭が棲みついている、オットセイにとって楽園のような海にあるのだ。
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