このほかに、緑の金属光沢のあるフォルモサ(台湾)シモフリクチブトカメムシの成虫と幼虫もいた。この幼虫は、キンカメムシかと思う美しさだ。しかし、美しさに似合わず肉食なので、毛虫に口を突き刺して体液を吸っていた。同じ仲間のコンシンナ・シモフリクチブトカメムシの成虫は地味な色合いだが、こちらも幼虫は美人だ。
日本でもおなじみのハートマークを背負ったエサキモンキツノカメムシは、台湾ではハートが真ん中で割れているのが多いようだ。失恋カメムシといったところか。
おまけは緑色に輝くハチの仲間の「セイボウ」。ミドリセイボウだろうか。日本にもいるが、この輝きは南国によく似合う。
さらなるおまけは、台湾ではどこにでもいるモモグロハサミムシの仲間。雄のお尻のはさみがともかく長くて格好いいので、はさみが一番長そうなのを探して撮影した。はさみの方が、それ以外の体長より長いのではないだろうか。このはさみは威嚇、攻撃の役に立つらしいのだが、ここまで長いと、実用性に疑問も生じる。雄のセックスアピール、つまり雌に見せつける格好いい飾りにはなりそうだ。
当初、八仙では蝶を期待していたのだが、初日の霧雨のせいもあって、蝶に関しては特別な収穫はなかった。しかし、カメムシ分野で、予想外の収穫があった。虫撮りではこういうことも多い。期待が外れても、意外な収穫があったりするのである。事前の調査では分からない、行ってみないと分からない。それがまた楽しい。
わずか1泊のために、重い荷物を持って移動するのはきつかったが、それでもこの一泊には大きな価値があった。それにしてもこの山荘は、いい宿だった。フロント係の彼女が親切でかわいかったからではない。景色も、サービスも、昆虫濃度もすべて合格点だ。
台湾の森林遊楽区とは、国立自然公園のようなものだ。これまでの経験では、南国の国立公園の宿泊施設は、管理が行き届いておらず、老朽化しているものが多かった。電球が切れていたり、湯が出なかったりは当たり前で、隙間から虫が入ってきたりする。昆虫記者にとっては潜り込んでくる虫も大歓迎だが、たいていの人々は、小さな侵入者を好まない。そういう所に泊まる客の多くが、宿泊施設の充実度よりも、自然の充実度を求めるから、こうなるのも当然と言えば当然である。
ところがこの山荘は「極めて小ぎれいで、設備もしっかりしていて、食事もおいしい」とさまざまなブログで評価されている。
八仙では、ほかに宿泊の選択肢がないので、この山荘に泊まるしかないのだが、その唯一の選択肢がこんなに素晴らしいということは、極めてまれである。
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