八仙山荘は、朝夕食付きだ。チェックインの際に夕食メニューをあらかじめ選ぶことになっている。5、6種類のメニューの中で選択に迷っていると、若くかわいい女性スタッフが、そばに寄って来て助言してくれた。助言の内容より、お近づきになれたことがうれしい。彼女の提案は「谷関の名物はマス料理とチョウザメ料理だから、この二つを選ぶのがいい」というもの。聞き間違いで、「二つ」ではなく、「二つのうち一つ」という意味なのだろうと思って、あまり食べる機会のないチョウザメのコースを頼んだ。すると、彼女は、「もう一つはマスでいいか」と畳み掛けてくる。昆虫記者の魅力に圧倒されて、特別の好意を示してくれているのか。何だか訳が分からず、「それでいい」と答える。
そして夕食時間。テーブルの上に運ばれて来たのは、二人分のコース。一つは焼き魚のマスをメインにしたコースで、もう一つはチョウザメの鍋コースだ。食べ切れそうにない量だが、スタッフは何食わぬ顔で、料理を並べていく。
宿泊料金の基本は1部屋いくらであって、2人で泊まっても、1人で泊まっても額は変わらない。3人で泊まる場合はエキストラベットの追加料金を取られるのが普通だ。日本のような「1人いくら」という設定は海外ではほとんど存在しない。
しかし、1人で泊まっているのに、食事が2人分付いてくるというのは、台湾が初めてだった。そういえば、谷関温泉の龍谷ホテルでもなぜか、3泊なのに朝食券が6枚付いてきた。これが台湾の常識なのかもしれない。
谷関温泉では節約のため夕食は屋台料理で我慢していたので、こんな豪華な夕食は今回の台湾虫旅では初めてだ。谷関温泉で名物のマスとチョウザメを食べなくて良かった。ここ八仙山荘で、1回の夕食でどちらも一度に食べることができたのだから。
隣のテーブルの客は、2人連れで泊まっているようで、1人に1食ずつ料理がテーブルに並んでいる。「1人で2人分も食べやがって、食い意地の張ったやつだ」と思われているかもしれない。「2人分の料金を払ったのだから、食事も2人分出せ」と、女性スタッフを脅したのではないかと思われているかもしれない。でも、これは台湾の常識。昆虫記者が非常識なわけではない。
いつも昼は虫撮りをしながらの軽い携帯食だけなので、胃袋にかなり余裕があった。そのおかげで大量の夕食を、何とか食べ切ることができた。かわいい女性スタッフの好意を無にせずに済んで良かった。八仙山荘に1人で泊まる場合には、十分に腹を空かせておくことをお勧めする。
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