その後も感動の出会いは続く。ホテル前の並木で、ミカドアゲハの幼虫を見つけた。初めての出会いというのは、いつも興奮を呼ぶ。ホオノキの小型版のような木だった。ミカドアゲハの幼虫は、タイサンボクやオガタマノキといったモクレン科の一部の木の葉を食べるが、この木もその一つなのだろう。
幼虫は若齢から終齢までそろっていたが、悲しいことに終齢幼虫はすでに寄生バチにやられて、息も絶え絶えだった。体の下には、寄生バチの白い繭がたくさん見える。
ミカドアゲハの終齢幼虫は、ひょうきんな目玉模様が特徴だが、死を前にその目玉は泣いているように見える。だが、これも自然の摂理。すべての幼虫が生き残ったら、この並木の葉は食べ尽くされてしまうだろうから、ハチが木を守っているとも言える。
八仙での最大の収穫はライチオオカメムシだった。果物のライチやロンガン(竜眼)の害虫とされる大型のカメムシだ。ライチ風の木に、赤くきれいな幼虫がたくさんいた。今が羽化のシーズンらしく、羽化を終えたばかりの成虫も一匹いた。
オオカメムシの仲間は、平べったい幼虫の美しさが際立つが、特にこのライチオオカメムシの幼虫は、大きさ、色彩とも最上級で、いつか絶対に見つけたいと思っていたのである。
たかがカメムシとばかにしてはならない。成虫はカナブンほどの大きさがある。そして、これぐらい大きくなると、その悪臭もばかにできないレベルとなる。特に幼虫が臭かった。近くで写真を撮るため、地面に降ろしたら、指先が異常に臭くなった。タイではこのカメムシを揚げて食べるというから、人間の食への執念はすごい。熱を通すと臭みが消えるのだろうか。
手持ちのティッシュの上で、プロの昆虫カメラマンが撮るような白バックの写真を撮った。ティッシュも臭くなる。そのティッシュで指先の臭いを拭き取ったのだが、ゴミを自然の中に捨てるわけにはいかないので、仕方なくそのティッシュをポケットに戻した。
その後の虫撮りで脇汗がひどかったので、ついポケットのティッシュで汗をぬぐってしまった。「臭いぞ」。さっきのカメムシ臭のティッシュを使ってしまった。カメムシの悪臭を、脇の下の悪臭に上塗りしてしまったのである。
妻から「カメムシ男」などと呼ばれるほどの脇の悪臭に、本物のカメムシ臭を追加してしまったのだ。これは地獄だ。
カメムシは撮影素材としては大好きだが、あの悪臭は勘弁してもらいたい。小さな入れ物に入れておくと、カメムシは自分の悪臭で死ぬことがある。そこに別の小さな虫を入れても、やはり死ぬ。つまり、死ぬほど強烈な悪臭なのである。きれいなカメムシを見つけても、近寄らない、触らないのが身のためだ。しかし昆虫記者の虫撮りは命懸けの仕事である。悪臭ごときに恐れをなして、接写を断念するわけにはいかない。虫撮りは時に、悪臭との戦いなのである。
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