昆虫記者と森の秘宝 マレーシア水の都を行く
 昆虫記者のなるほど探訪

水の都、ジャングルのベニスでまったり

 3月某日朝。ともかく眠い。マレーシア最大の国立公園「タマンネガラ」滞在も既に4日目となると、疲れがたまっている。1日のエネルギーの大半を無料の朝食バイキングで摂取しないといけないのに、疲れ過ぎて食欲がない。「ラジオ体操でもやって腹を減らすか。よっこらしょ」とベッドから起き上がるが、途端によろけそうになる。腰骨がバキバキ。そして筋肉がズキズキ。足が痛いのは仕方がないとして、何で腕の筋肉まで痛いんだ。(時事通信社 天野和利)

 そうか、山道をロープで上り下りしたからな。その上、毎日昼の虫撮り、夜の虫撮りの後、1日2回「全手動」で洗濯したからな。最後にギュッと雑巾絞りするのが結構きつい肉体労働だった。

 荷物を減らすため、パンツは使い捨ての紙パンツ。しかし、上着とズボンは紙というわけにはいかない。3枚しかない上着、2本しかないズボンは、毎日洗濯しないといけないのだ。

 日増しに運動量が減っていく。だんだん怠惰になる。疲れもあるし、熱帯の気候が昆虫記者本来の怠け癖を引き出す。あくせく働いても誰も褒めてはくれない。やる気の出ない日は、ダラーンと、ベローンとしていたい。

 虫は見たいが、猛暑の中でのジャングルトレッキングはもう嫌だ。ジャングルは暑いから、汗をかく。そうすると、加齢臭も加わって、服は悪臭を放つ。すると、また重労働の洗濯をしないといけない。うーん、何か解決策はないものか。涼しくて、楽な虫撮りの方法はないものか。

 「そうだ、この手があった」-。タハン川の浅瀬に広がる天然のプール「ルボ・シンポン(LUBOK SIMPON)」だ。ロッジからはわずか1キロほどの距離だ。一日中あそこにいれば涼しいぞ。サンダルも持ってきているし、ズボンをまくって、水に足を漬けていればいい。ジャングルの中は風がないから蒸し暑い。でも、河原は風が吹き抜ける天然のクーラーだ。そして、水辺には、涼を求めて蝶(チョウ)が飛んで来るはずだ。

 体力低下が著しい中高年には、過酷な虫撮り労働の合間に、安楽に過ごす一日が絶対に必要だ。気概とか、意気込みとか、そんなものは過去の遺物だ。過労で倒れるようなブラック企業的な虫探しはトレンディーではないのだ。今や働き方改革の時代である。長時間労働是正が叫ばれる時代なのだ。楽してなんぼである。

 そうと決まれば、筋肉痛もなんのその。頑張って大量の朝食を腹に詰め込んだら、弁当を準備して出発。そして、少し汗をかき始めた頃には、もう天然プールに到着していた。

 実はこのプールには、2日前にも、ちょっとだけ立ち寄っていた。しかし、前回は、あまりにも予想外の事態に行く手を阻まれた。それは、突然のヌーディストの出現であった。

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