映画「ぼくのおじさん」が11月に公開される。映画には残念ながら昆虫はほとんど登場しないが、「おじさん」は絶対に虫好きなのだ。原作者であり、おじさんのモデルでもある「どくとるマンボウ」こと故北杜夫氏が無類の虫好きだったからである。(時事通信社・天野和利)
先日、軽井沢高原文庫(長野県軽井沢町)で開かれた「虫の惑星・地球甲虫展」をのぞいてきた。虫集めに夢中になる人の中には、世界に誇るべき著名な学者も多いが、「ぼくのおじさん」に登場するような、ちょっと変わり者で、一見何の役にも立たなそうなおじさんもいる。今回の甲虫展の虫を集めた人々の中にも、確実に一人、そんなおじさんがいた。芥川賞作家で、ドタバタ体験談でも有名だった北杜夫氏その人だ。
北氏が最も好きだった昆虫はオオチャイロハナムグリ。知っている人は相当の昆虫好きだろう。日本固有種だが、黒褐色で光沢も弱く、コガネムシ科の中でも目立たない存在だ。中学生の時に初めて採集した希少種だったというが、その後もコガネムシばかり標本箱にして30箱も集めたというから、少年時代から相当マニアックだったことは間違いない。高原文庫では、北氏が軽井沢で採集した昆虫のほか、肉筆原稿なども展示されていた。
北氏の「どくとるマンボウ昆虫記」などを読むと、虫に夢中になっているおじさんたちは、とてつもない変人と思われるかもしれない。しかし、それは北氏の抜群のユーモアの所産であり、実態は、自然やら、地球の他の生き物やら、人間以外のものに普通よりも少しだけ、強い興味を示す人というだけだ。
バックナンバー
シンガポールの沿線虫ガイド2 海辺の名所めぐり
(19/06/04)シンガポールの沿線昆虫ガイド オーチャードは蝶の道
(19/04/01)幽霊列車とサソリと暗殺者の宿 タイ・サイヨーク国立公園
(18/12/21)タイ一番の滝とビキニと蝶 エラワン国立公園
(18/10/18)タイの虫旅は死の鉄道に乗って
(18/08/30)昆虫記者と森の秘宝 マレーシア水の都を行く
(18/07/26)マレーシア・ジャングル放浪記 天女の誘惑
(18/05/16)昆虫記者は2度死ぬ マレーシアでサソリと対決
(18/04/11)新年の誓い 上高地で打倒オオイチモンジ
(18/01/11)闇に潜む魔物たち タイ・カオヤイの旅3
(17/11/09)昆虫ラブストーリー タイ・カオヤイの旅2
(17/08/14)ゾウの糞に集う虫たち タイ・カオヤイの旅1
(17/07/14)幸せの青い蝶「ユリシス」を求めて 豪キュランダの旅3
(17/05/08)虹色のクワガタとの遭遇 豪キュランダの旅2
(17/03/16)世界の車窓から虫探し 豪キュランダの旅
(17/02/10)映画「ぼくのおじさん」と「どくとるマンボウ」
(16/10/13)トリバネアゲハと露天風呂ざんまい
(16/09/13)昆虫記者の原点 オオカブトの来る高原の宿
(16/08/05)古都鎌倉で虫詣で
(16/05/24)「横浜〜鎌倉」昆虫バイパス道<横浜編>
(16/04/27)弱肉強食の昆虫バトルフィールド
(16/03/16)真冬の昆虫押しくらまんじゅう
(15/12/21)ムササビの森でビワハゴロモと深夜の密会
(15/11/09)オランウータンの森に舞うビロードの蝶
(15/09/07)果てしなく続く擬態合戦
(15/06/30)熱帯昆虫巨大化の法則を探る
(15/05/08)微細な生物の競演
(15/04/10)昆虫写真家・新開孝さんを囲む会
(15/01/13)見ごろは晩秋から初冬
(14/12/04)三つ星の虫が続々
(14/10/27)森上信夫氏に聞くプロへの道
(14/09/11)みんなで「モス」しませんか
(14/08/04)全種の累代飼育に挑む達人
(14/07/01)助っ人は蝶館主人の熱虫人
(14/05/19)光り輝くカメムシとカッチカチのゾウムシ
(14/04/15)巨象の群れとバラ色のカマキリ
(14/01/21)特集
コラム・連載