【昆虫記者】真冬の昆虫押しくらまんじゅう
 昆虫記者のなるほど探訪

昆虫界のサンタは海辺の森に

 冬はおしくらまんじゅうの季節。虫の中にも、ぎゅう詰め状態で冬を越す寒がりは多い。夏の野を花から花へと飛び交う陽気な虫もいいが、肩を寄せ合って寒さをしのぐけなげな虫たちの姿もまた、虫好きの心を揺さぶるのである。

 12月に入ると街は一気にクリスマスムード。昆虫記者もサンタクロースを探しに海辺の森へと繰り出す。昆虫界のサンタと言えば、集団越冬で名高いオオキンカメムシだ。鮮やかなオレンジ色はサンタの衣装をほうふつとさせる。カメムシにしては分厚い胴体は、ふくよかなサンタの姿そのもの。太字のマジックでなぐり書きしたような背中の模様は、無理をすればサンタのにこやかな笑顔に見えないこともない。

 昆虫記者がまず向かったのは、神奈川県の最南端、三浦半島の先端に位置する城ケ島。東京や神奈川の都会の公園で夏を優雅に過ごしたオオキンカメムシたちが、突然やってきた冬の寒さに震え上がり、思慮分別なく、やみくもに南へ南へと飛んで行けば、陸地の行き止まりがここ城ケ島なのだ。その先へさらに飛んで行く無鉄砲なやつらは、太平洋上で遭難する運命にある。

 城ケ島はウミウの越冬地として有名だが、オオキンカメムシの越冬地としてはほぼ無名だ。城ケ島には、この地にゆかりのある詩人・童謡作家の北原白秋の詩碑があるが、白秋の詩にオオキンカメムシが登場するという話は聞いたこともない。だが、昆虫記者にとっての城ケ島は、誰が何と言おうと、昆虫界のサンタこと、オオキンカメムシの越冬地なのだ。

 しかし、悲しいかな。ここのオオキンは大集団を形成するほど数が多くない。マサキに1匹。シロダモの木に1匹。ボツリボツリとしか姿を見せない。やはり、近場で交通費をけちっては、サンタに見放され、貧乏神にたたられるのだろうか。

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