虫は「大きければいい」というものではない。しかし「ともかくでかいのが好き」という人がいるのも事実だ。ライバルより1ミリでも大きいクワガタを手に入れたいと血眼になる者もいる。ボルネオの熱帯雨林は、そういう大物好きにとっても、夢の地である。
大物を見るには、夜の森に強力なライトを持ち込んで虫をおびき寄せる「ライトトラップ」がお勧め。でも、日本から機材を持ち込むのは大変だし、異国で闇夜のジャングルに一人で入り込む者には「どうせ死ぬなら虫探しの最中に死にたい」ぐらいの勇気が必要だ。むろん昆虫記者には、その覚悟は…ない。
クロッカー山脈の一角にあるキパンディ・バタフライ・パークは、昼は蝶園だが、ツアー会社を通じて事前に申し込んでおくと、夜にはディナー付きのお手軽ライトトラップを楽しむことができる。
ジャングルの中の明かりには、まず全身緑色のセミが大挙してやってくる。青やオレンジ色のタイプもいる。絵の具を塗ったような極めて人工的な色彩だ。大型のクマゼミの仲間もやってきた。そして、さらに大きい「タクア・スペキオサ」というアブラゼミの仲間。南国風の黄色い首飾りが目立つ。
しばらくして、お待ちかねのカブトの「ブオーン」というすさまじい羽音。ボルネオオオカブト(モーレンカンプオオカブト)だ。雄雌合わせて6~7匹。日本からの観光客は、たいてい虫好きの子供にせがまれてここにやってくる。狙いはカブトやクワガタだ。なぜか日本の子供たちは、カブクワが大好きだ。
そして、昆虫記者もカブクワがやってくると「ウワー、ウギャー」とやたらに興奮する。精神構造はお子様なのである。そしてカブトは、雄雌が集合するとすぐに交尾を始める。昆虫記者は大人なので、こういうシーンもお気に入りだ。
クワガタもやってきた。胸の部分のトゲが鎧のようで格好いいダールマンツヤクワガタだ。
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