これまで闇に隠れていた蛾が一気にメジャーに昇格する気配が、今年は日本中に立ち込めている。その理由はナショナル・モス・ウィーク、世界蛾週間(今年は7月19~27日)だ。
モス・ウィークとは何ぞや。2005年に米国で始まったモス・ナイト(蛾の夕べ)から発展した市民参加型の科学プロジェクト。国際化されたのはごく最近のことで、日本からの参加は今年が初めて。その記念すべきイベントの一つが、山梨県北杜市のオオムラサキセンターで開かれると聞けば、昆虫記者はもう居ても立ってもいられない。
蛾愛好家を通称「蛾屋」と呼ぶ。蛾自体が嫌われ者だったので、蛾屋もそのとばっちりを少なからず受けてきた。蛾採集のゴールデンタイムは夜中。夜ごと懐中電灯を持って繰り出し、街灯、自販機、コンビニ、公衆トイレなどの周囲をうろうろしていれば、怪しまれない方がおかしい。家族の理解も得にくい。
このように、蛾屋の中には、肩身の狭い思いをしてきた人も多く、それだけに溜め込んだエネルギーは半端ではない。「日本の蛾屋の国際化が一気に進む」。「蛾をメジャーに」。今年は、蛾屋の鼻息が荒い。
今年からは、少なくともモス・ウィークの期間だけは、蛾屋も「世界的な科学プロジェクトに貢献している」と、家族やご近所に胸を張って言えるようになるのだ。米国のモス・ウィーク関係者らは、蛾観察、蛾採集のことを「MOTHING」と、格好いい名で呼んでいるらしい。さあ、今夜は格好良く「モス」しに行こう。
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