会員限定記事会員限定記事

「孤独死」に備える

少ないデータ

 無縁遺骨の増加の背景には「家族関係の希薄化」などがあると指摘され、孤独死の増加と共通している面がある。ただ葬祭関係者らに聞くと、孤独死のケースでも、警察や役所が調査を行えば、血縁関係の遠い親戚ら「誰かしら」と連絡が取れることが多い。そして「遺産がある場合は、ほぼ確実に引き取り手が出る」そうだ。そうした意味で、無縁遺骨の数と孤独死の件数に直接の関係は無い。

 A市では12年2月、60代の夫婦と30代の息子とみられる男女3人がアパートで死亡し、死後約2カ月後に発見されるという事件が発生し、大きなニュースとなった。3人の部屋は電気やガスも止まった状態で、室内で見つかった現金は1円玉数枚のみ。冷蔵庫に食料品はほとんどなく、餓死した可能性が高い。しかし3人は市に住民登録しておらず、生活保護の申請もしていなかった。

 この事件を契機に、「支援が必要な状態であっても自らSOSのサインを出さない、あるいは出せないような要支援世帯を早期に発見することが重要」(担当課)と、孤立状態にある人の異変を早期に発見し、通報するためのガイドライン作成など孤独死防止対策を推進している。担当課によると、15年4月-12月にガイドラインに沿った通報が15件あった。その中には、通報を受けて駆けつけた市の職員が、衰弱した状態で部屋の中にいた住人を発見。すぐに救急搬送し、一命を取り留めたケースもあったという。

 孤独死の防止対策に力を入れる市だが、発生件数などに関する具体的なデータについて尋ねたところ、「存在しない」との回答だった。遺体の引き取り手がなく市が対応したケースや、ニュースとして新聞やテレビで取り上げられたケースであれば件数の確認も可能だが、それ以外では、市としても「把握する手立てがない」のが現実という。

 実際、孤独死をめぐっては、国として共通した定義は存在せず、調査や統計に基づくデータも少ない。そんな中、「東京都23区における孤独死統計」をまとめているのが東京都監察医務院だ。同院は23区内で発生したすべての不自然死(死因不明の急死や事故死など)について、遺体の表面を調べる検案や解剖を行い、死因を明らかにする仕事を担う。孤独死に関するデータ収集や分析も実施し、結果を公表している。「3万人」という孤独死の全国推計も、同院のデータがベースとなっている。

 ちなみに同院の2014年統計によると、23区内の孤独死は男性が3091人(65歳以上は1778人)、女性が1375人(同1107人)。孤独死の件数は男女で大きく違う。また女性の孤独死は67.6%が0-3日で発見されているのに対し、男性は0-3日が46.4%に止まり、4-7日が18.8%、8-14日が13.3%、15-30日が11.6%に上る。孤独死は男性の数が圧倒的に多く、発見されるまでの時間も男性の場合、長く掛かる傾向にあることが分かる。

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ