14年前、86歳の祖母が病院で息を引き取ったときのことを思い起こす。臨終の知らせを受け、娘と息子、その伴侶に孫、計10人以上が駆けつけた。狭い病室で皆、壁にへばりつくように立ち、「お母さん」「おばあちゃん」と呼び掛けたのを覚えている。
大勢に囲まれて死んだ祖母について、特別だという感覚は全く無かった。しかし現在の日本で、こうした光景は「希少」になってきているという。8人兄弟で生まれた祖母には、3人の子どもと7人の孫がいて、妹2人は今も健在だ。対して約40年後、仮に筆者が86歳で臨終を迎えたとしてどうだろう。二人兄弟で子ども1人の筆者の場合、家族全員が駆けつけてくれたとしても、たぶん数人にしかならない。
核家族化や少子化、生涯未婚率の上昇などを背景に、誰にもみとられることなく自宅で1人死亡する「孤独死」が急増している。2015年中の全国の死者数は概ね130万人。孤独死は年間3万人程度と推計されている。
内閣府の高齢社会白書(15年版)によると、一人暮らしの65歳以上高齢者の数は、1980年は88万人だったのに対し、2010年には479万人に増加。2035年には762万人に達する見込みだ。65歳以上の男女を対象とした同府の調査(14年度)では、「孤独死を身近に感じるか」の質問に対し、14.5%が「とても感じる」、30.1%が「まあ感じる」と回答した。国立社会保障・人口問題研究所の推計(14年4月)によると、35年には一人暮らしが1845万世帯に達し、全世帯(4955万世帯)の3分の1以上になると予想しており、今後も孤独死の増加は避けられない見通しだ。
「孤独死はもはや身近な問題」「これからは孤独死が『スタンダード』になる」と専門家らも口を揃える。社会として、また個人として、孤独死にいかに備えるべきか。実例や有識者の話を基に考えた。
なお「孤独死」の言葉に関しては、公的、統一的な定義がなく、研究者や団体によっては「孤立死」などを使うケースもあるが、ここでは「誰にもみとられることなく死亡し、一定期間を経て発見されるケース」の意味で、「孤独死」に統一した。(時事通信社・沼野容子)
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