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「無観客開催」続ける中央競馬

上半期のGⅠシリーズ、折り返し点

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、中央競馬は2月29日から無観客での開催が続いている。国内スポーツイベントの中止や延期が相次ぐ中、その存在は異彩を放つ。2020年上半期のGⅠシリーズは真っただ中を迎え、今が折り返し点。緊急事態宣言が全国に発令されても継続する意義は―。「娯楽」と「社会貢献」の二面性を持つ競馬の現状を追った。(時事通信大阪支社編集部 西村卓真)

◇ひづめの音が響き渡る

  無観客のGⅠ。メインスタンド前でサラブレッドが駆け抜けるひづめの音と騎手が打つむちの音が響き渡り、場内には実況アナウンスがこだまする。普段なら数万人の大歓声にかき消されてしまうリアルな「息吹」を感じ取れる一方で、もの寂しさが漂う。1954年設立の日本中央競馬会(JRA)が初めてレースを無観客状態にしてから、約2カ月半がたった。

 GⅠは3月29日の高松宮記念(中京競馬場)が振り出し。松若風馬騎手が騎乗したモズスーパーフレアが勝った。レース後に優勝馬の記念撮影は行うが、表彰式はない。松若騎手は「ファンファーレ(発走に先立って流れる音楽)の時が寂しいと思った。普段なら手拍子が聞こえてくるけど、それもなくて…」。それでも「競馬ができるのは本当に幸せなこと。お客様の大切さもすごく感じた」と話した。

◇続けさせてもらい感謝

 3歳牝馬クラシック第1戦、桜花賞(阪神競馬場)ではデアリングタクトが優勝した。「こうやって毎週続けさせてもらっていることに感謝したい。競馬を通して皆さんに勇気を与え、あすへの活力となるよう強い馬づくりに努めていきたい」と杉山晴紀調教師。天皇賞・春(京都競馬場)を制したフィエールマンに騎乗したクリストフ・ルメール騎手は、テレビの前で応援するファンに感謝のメッセージを送り、「早めに競馬場で会いたいですね」と望んだ。

 競走馬にとっては無観客の方が好都合なのかも、との見方もあるようだ。馬は元来、広い視野と優れた聴覚を備えている。ある調教師は「一概に言えないが、普段より落ち着いている馬が多い。馬はもともと繊細だから」と話す。ファンの視線を集めるパドックや発走前の大歓声などに対し、神経をすり減らす必要がなくなるのかもしれない。

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