山口県周南市の大津島行きのフェリー乗り場には、映画「出口のない海」の撮影で使用された人間魚雷「回天」の原寸大のレプリカが飾られている。同市の離島、大津島には戦争末期に搭乗員らが秘密裏に訓練を積んでいた基地があり、回天の島として知られている。開戦70周年を控えた11月末の晩秋、大津島の回天記念館を訪れた。(時事通信社山口支局・中出範尚)
島までの距離は周南市のフェリー乗り場から南西に約10キロ。フェリーで約45分、高速船なら20分程度で到着する。フェリーはコンビナート群を横に見ながら、小島の浮かぶ穏やかな瀬戸内海を進み、ほどなくして目の前に大津島が見え始める。
同記念館は市営で、年間来館者は約1万5000人。「出口のない海」が公開された2006年度は約2万4000人が訪れたという。
島に着くと、フェリーの切符売り場の外に「しおかぜ号」と記された自転車が3台。無料で貸し出しているという。切符売り場にいた高齢の男性に聞くと、記念館までは歩いて15分とのことだが、せっかくなので、自転車を拝借した。
看板の矢印を目当てに小高い丘を上っていくと、回天記念館が見えてきた。「いらっしゃい」と迎えてくれた事務長の松本紀是さん(66)から、まずは回天の開発経緯について説明を受けた。
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