海上の治安・安全確保を任務とする海上保安庁。約1万3000人の職員が日々、海難救助や領海警備、密漁・密輸・密航対策などに当たっている。力仕事や危険な現場が多く、「男性職場」のイメージが強い海保だが、全国で約800人の女性保安官が働く。政府の方針などを受け「女性の活躍」に力を入れる企業が増えている中、海上でも女性進出の波が広がっているのだ。
海上保安官といえば、沖縄県・尖閣諸島沖の警備や東日本大震災での不明者捜索、海難救助で活躍する潜水士を描いた映画「海猿」でも脚光を浴びたが、警察官や消防士のように日常生活で接する機会は少なく、知らない部分は多い。増えつつあるとはいえ女性保安官も、まだまだ一般にはなじみの薄い存在だ。
今回、その現役女性保安官に話を聞き、現在の仕事のこと、これまでの訓練や経験を通じて感じたこと、子育てや家庭との両立、将来のビジョンなどについて詳しく語ってもらった。海上、陸上、そして空でも活躍する6人の「海保女子」を紹介する。(時事通信社・沼野容子)
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海上保安官になるためにはまず、海上保安学校(京都府舞鶴市)か、海上保安大学校(広島県呉市)の採用試験に合格しなければならない。海保学校は「船舶運航システム」「航空」など4つの課程に分かれ、それぞれ1-2年かけて実践的な教育が行われる。大学校は幹部職員の養成を目的としており、教育期間は本科4年、専攻科6カ月。
初めて女性が採用されたのは、1979年10月期の海保学校試験。採用者約130人中、9人だった。80年4月には大学校でも初の女性が入学。その後、女性採用数は両校合わせて年間20-30人程度で推移し、団塊世代の大量退職で採用全体が膨らんだ2007年度、約60人に拡大した。さらに、採用者に占める女性の割合を20%程度とする目標を掲げた11年度から、約80人に増加している。
現在、巡視船の船長や航空機の機長として、あるいは政策立案、庶務などの陸上業務で、女性保安官が活躍の場を広げている。同庁によれば、子育て中の「ママさん保安官」も約130人(2014年9月現在)にまで増えている。
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