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石巻赤十字病院 石井正氏インタビュー

医者としての本能に目覚めた

アセスメントの方法は?

 避難所を回る先生方に項目ごとに「◎○△×」の4段階評価をお願いしました。前の晩にホワイトボードの避難所リストを眺めていたら、元からある(自由記入式の)調査用紙じゃ無理だと思って。

 きっとみんないっぱい書き込んでくる。食料だったらおにぎりが何個くらいあったとか、読み物になってしまうと、読むのが大変になって、評価ができない。数枚から10枚くらいならともかく、全部で300枚とかになったら、本来の目的である早い判断ができない。だから記号化しちゃえと。

 自由に書く欄は残しましたけど、とにかく粗っぽくていいから、記号で書いてもらった。×や△の所さえまずカバーすればいい。○は後回しでいい。専門性の高い医師や看護師が行くわけですから、調査員としての精度は高い。主観でいいですとミーティングで言った。

 一部から食事は何食以上で△ですかと聞いてくるから、それはどうでもいい。足りると思えば○、ちょっと足りないなと思ったら△と。

ほかにも工夫がありましたか。

 この調査は継続し、累積しました。災害史上初めてでしょう。そんなデータを持ってる所はほかにないですよと、いろんな方に言われました。

 学会などでも、あまり具体的な数字を聞いたことはありません。避難所のうち何パーセントで食料が足りないとか、全体で何人診察したんだとか。なぜかというと、パソコンで管理しているから上書きしちゃうんですよ。僕らは新しいファイルを足していった。

 最初の2、3日は消していたのを、紙版は残っていたからそれで復元して、その後はファイルの方も残すことにしたのです。

 災害医療の研修などで習うんですよ。クロノロジーと言って、時系列データに沿って残すことが大事だと。ただそれを実行しただけなんです。

避難所での実際の調査は?

 調査に出る際は、食料や水も車に積んで行きました。それは行政の仕事ではないのか、なんて言う人もいましたけれど、必要な事は何でもやるんだと答えました。 ああいう現場に評論家は要りません。もっとも最初からそんな大乗段に構えて言っていたわけじゃありません。

 市役所が水没して機能停止しているような時に、職員たちはすごい忙しいんですよ。医療、保健衛生以外のことで。道路がどうだ、罹災証明どうだ、遺体はどこに集め、どこに埋葬する…山のような仕事を持っている。そこへ行って、これをやってよなんて言えない。こっちでやっときますという感じでした。

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