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石巻赤十字病院 石井正氏インタビュー

医者としての本能に目覚めた

 東日本大震災による死者・行方不明者が3800人以上に上った宮城県石巻市。隣接する東松島市、女川町を含む「石巻医療圏」で、県災害医療コーディネーターに委嘱されていた石巻赤十字病院外科医の石井正さんは、全国から駆け付けた医療チームの指揮を執った。一人でも多くの人を助けたいと奮闘した7カ月間を振り返り、「東日本大震災 石巻災害医療の全記録」(講談社ブルーバックス)にまとめた。
 当時、現場でどのような困難に直面し、それをどうやって克服したのか、インタビューした。
(文化部・三澤克彦)

被害の規模が大きく、災害医療の現場も想定外の連続だったのでしょうか?

 皆さん「想定外」とおっしゃいますが、そもそも想定なんてできていない。降りかかった問題を振り払っていくしかないんです。それが病院の仕事。慌てたりはしません。 僕だけでなく、みんなそうです。こう来たらこうこなすという感じ。今回ほど大きくなくても多くの地震を経験してきて、そのたび病院に参集していますから。

被災者の状況や救護ニーズの把握はどのような形で。

 発生5日後、石巻市の職員がまとめた300カ所、5万人という避難所のリストを入手し、さてどうしようかと思いました。全体状況を把握してからでないと、どこにどういう手を打っていいか分からない。

 けれど、もし調べるのに2週間くらいかかってしまうと、時間がかかり過ぎです。近所から回るのは手っ取り早いけど、などと迷いながら、いろんな先生に聞くと、全員がまず全体をアセスメントすべきだと言う。じゃ、やりますかと。

 1週間くらいかかるかなと思ったら、3日で終わったよと言われて驚きました。実際行ってみると、人がいない避難所もあるんですよ。結果的にデータが古かったというか、地震直後にざっと、少ない人数で回ったんでしょう。 5人くらいいても、はいここも避難所、と次へ行く。小さい所は食料がもらえる所へ移動して、なくなったりするわけです。逆に人数が増えた所もあって。

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