欧州の信用危機がギリシャから今度は、北の島国アイルランドに飛び火した。不動産バブルの崩壊で銀行に発生した巨額の不良債権に対する膨大な処理コストが政府の財政を圧迫、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)への緊急支援の要請に追い込まれた。第2幕の危機は既にスペインやポルトガルなどに波及しつつある。
(時事通信社外国経済部 田中健吾)
▽先が見えず、人々は貯蓄へ
ダブリン市の中心部を東西に流れるリフィ川。川にはアイルランドの国の象徴ハープを模した橋が架かっている。昨年開通したその橋の北側には、今年完成の国際コンベンションセンター、南側には再開発で建設された商業用とみられる大型ビルも見える。近年の不動産開発ブームに沸いた様子が一目で分かる。
だが、街中ではアイルランド名物の黒ビール「ギネス」の広告と同様、テナント募集を意味する「TO LET」の看板がぶら下がった空き店舗などの物件をよく目にする。この一角で30年にわたり家具屋を営むポール・ジョーンズさん(54)は、バブル崩壊を肌で感じる一人だ。店の売り上げが昨年よりも4割減少したといい、「状況は悪化するばかり」と嘆いた。
同国では拡大した財政赤字を抑制するため、2008年から緊縮財政が続く。アイルランド企業・雇用者連合(IBEC)によると、かつて3%程度だった家計の貯蓄率は足元では12%まで上昇。財政再建に向けて増税も予定されており、「人々はどのくらい税金を支払うのか、大変心配になっている」(同連合)という。
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