人類はこれまで、さまざまな感染症と闘ってきた。14世紀に欧州で猛威を振るったペスト。差別問題にもなったハンセン病や、ウイルスが形を変え、流行を繰り返すインフルエンザなど、例を挙げれば切りがない。
感染症が確認されるたびに、ウイルスや細菌など病原体の探索、薬やワクチンの開発が行われてきた。その結果、天然痘は、「種痘」というワクチン接種が世界に浸透し、世界保健機関(WHO)が1980年に根絶宣言をしている。
だが、今なお有効な薬がないものもあるほか、病原体が巧妙に形を変えて薬に耐性を持つものも出現。また、エイズや鳥インフルエンザなど、70年以降に新たに認識された「新興感染症」、紀元前にも痕跡が見られるマラリアや国民病と呼ばれた結核など、過去にはやったものが再び流行する「再興感染症」もわれわれを悩ませる。
今、西アフリカではエボラ出血熱の感染が広がり、喫緊の課題となっている。一方、日本国内に目を向ければ、約70年ぶりに渡航歴がない人でデング熱の感染例が確認された。
世界中で脅威となっている感染症。課題や対策、日本が取り組むべきことは何か。長年にわたり、アジアやアフリカなどで感染症対策に尽力してきた長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授に聞いた。
―2013年12月にギニアで確認されたエボラ出血熱は1年もたたずに、リベリア、シエラレオネ、ギニア、セネガルと一気に広がった。WHOによると、14年9月21日までで6000人以上が感染し、死亡者は3000人近くに上った。「40年間で最も深刻」と緊急事態が宣言されるまで感染が広がった理由は何か?
二つある。一つは、アフリカで(土地開墾などの)開発が進んだことだ。道を造ったり、街を大きくしたりするために森林が伐採された。その結果、森にすんでいた動物とヒトとの接触機会が増えた。エボラウイルスの宿主として考えられているコウモリもそうだ。
二つ目は、開発の結果、人口密度が増す都市化が進行したことだ。人が増えれば、都市から町、町から町という移動も頻繁になる。これまでなら、どこか小さな町で起きた感染は、その町だけにとどまるケースが多かっただろうが、移動が増えるとその分、広がりやすくなる。
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