プロ野球選手による高校選手対象のシンポジウム「夢の向こうに」は2003年に始まった。当時の日本高校野球連盟事務局長だった田名部和裕さん(73)によると、この試みはプロ選手もとても喜んでいたという。
「もっと続けてやれないでしょうか」。日本プロ野球選手会の古田敦也会長(当時ヤクルト)にそう言われ、「やるなら全都道府県でやってほしい。何年かかってもいい」と返す。結果的にその後8年で一巡させた。
プロが高校生と楽しげに接する様子を見ながら、田名部さんはこう感じた。「彼らは、過去に球団が起こした学生野球に対する問題と無関係に育っている。なぜ壁が取り払われないのかと、素直な疑問を持っていた」
プロのスカウトも関係改善を望んでいた。田名部さんによると、春季キャンプで使ったボールを高校に贈ることは、ある球団のスカウトの発案だった。高校の試合を観戦する際にはIDカードを着用。それは「裏金問題」で生まれた不信感をなくすために「私はルールを守ります」という意思表示でもあった。
こうした流れの中で、プロ関係者との接触を禁じた規則も緩和が進む。05年からは現役プロがオフに郷里に帰った際に、母校で練習できるようにした。12年にはプロによる実技指導のシンポジウムも開催した。
最も大きな変化は「学生野球資格の回復」だろう。元プロ関係者が一定の研修などを受ければ学生野球の指導が可能となる制度で、1100人以上が資格を回復した。田名部さんは「平場に皆がそろった。これをどう生かすか、次の世代の人たちに考えてもらえれば」と話す。
新着
会員限定