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次の時代に重い課題、「平成と高校野球」

歴史動かした恩返し

 平成とは、長い断絶状態にあったプロとアマチュア野球の関係が大きく変化した時代でもある。

 歴史の歯車が動くのは2002年。当時の日本高校野球連盟事務局長だった田名部和裕さん(73)は8月下旬の暑い日を思い出す。日本プロ野球選手会の故松原徹事務局長から「相談がある」と連絡を受け、朝早く喫茶店で会った。

 選手会がオークションで積み立てた1000万円を役立ててほしいとの申し出だった。「プロ選手が、自分を育ててくれた高校野球に恩返ししたいと。驚きました」

 その年の11月、日本高野連の新会長に脇村春夫氏が就任。神奈川・湘南高時代の後輩で、元プロの佐々木信也さんから「母校に行って生徒に激励もできないのは寂しい」と言われ、プロとの関係改善に動き始めた。

 プロアマ問題の歴史は古い。1950年代は高校選手に対するプロの強引なスカウト活動が問題に。61年には社会人選手の引き抜きをめぐるトラブルがあり、両者の溝は決定的となった。

 しかし、流れは03年に変わり始めた。その1000万円を使って1320校にボールを贈り、プロ選手のメッセージも添えた。年末には現役プロによるシンポジウム「夢の向こうに」を開催。04年にはプロ野球と高野連がドラフトに関する覚書を交わし、両者の健全な関係を阻む行為には誠意をもって調査することを誓った。

 その後、プロから学生選手らに不正な金銭供与があった過去の事例が判明。田名部さんは当時の心境をこう語る。「これはレアケース。球界全体がゆがんだわけではない。そう考えないと、積み上げた信頼関係が水泡に帰す」。流れを止めるわけにはいかなかった。

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