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次の時代に重い課題、「平成と高校野球」

体罰ない指導のヒント

 何十本も続く個人ノック。選手が右へ左へと飛びつく。それ以外の選手は、後ろで横一列になって声援を送る役目だ。一球一球に歓声が上がり、笑顔がはじける。

 ノックバットを振るのは「甲子園塾」の2代目塾長、山下智茂さん(74)。「おお、うまい。ええな。よくなった」。星稜(石川)の監督時代に松井秀喜さんらを育てた名将は巧みに励まし、アドバイスを送る。

 その様子を熱心に見るのは全国から集まった野球部の監督たち。タブレット型端末に映像を収め、選手の「やる気」に火を付ける指導法のヒントをメモに書き留める。

 日本高校野球連盟が開催する甲子園塾は、教員歴10年未満の若い指導者が対象の研修会で、2008年に始まった。日程は3日間。初日は野球指導者に必要な法的知識などを学ぶ座学。あとの2日は実技。関西の高校をモデルチームにして、山下塾長や特別講師が指導法を披露する。

 昨年は、16年夏の甲子園で作新学院(栃木)を優勝に導いた小針崇宏監督(35)が特別講師を務めた。「俺のまねをして一緒にやってみて」。二塁からリードを取る幅や、走るタイミングの手本を示しながら丁寧に説明を繰り返した。

 やってみせ、言葉を尽くして理解させる。「覚えてほしいことを覚えていなかったことが試合中に分かったら、悲しいですからね」と小針さん。

 甲子園塾の初代塾長だった箕島(和歌山)元監督の尾藤公さん(故人)は、グラウンドを畑に例えた。開墾し整地し、肥料をまき水をやる。「物言わぬ農作物に『不作だ』と言うのか? それは明らかに世話不足だ」。甲子園塾は、次代を担う指導者たちが「体罰のない指導」を考える場となっている。

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