画期的な瞬間だった。米プロバスケットボール協会(NBA)のドラフト会議が6月20日(日本時間21日午前)に行われ、八村塁(21)=ゴンザガ大=が首都ワシントンを本拠地とするウィザーズから1巡目で指名された。全体でも9位。今のNBAドラフトは30チームが毎年、1巡目と2巡目で計60人しか指名しない狭き門だ。1年目から約4億円もの年俸で契約するとみられる。
海外のプロスポーツという点から見ても、過去に日本選手が米大リーグのドラフトで下位指名を受けたことはあるが、最初から即戦力級と高く評価されるのは極めて異例。「日本にとって大きな意味がある」と八村は言う。ドラフト1巡目指名は、バスケットボール界でもボーダーレス化が進んでいることを示している。(時事通信運動部 飯塚大輔)
◇遠い存在だったNBA
日本でも広く親しまれ、歴史も長いバスケット。国内トップ選手であっても、NBAは気の遠くなるような夢に近い存在だった。38年前の1981年、実業団の住友金属でプレーしていた身長230センチの大型センター、岡山恭崇がNBAのウォリアーズからドラフト8巡目、全体171位で指名された。それでも契約交渉に入ることなく、入団には至らなかった。現在64歳の岡山さんによると、指名を受ける以前に米ポートランド大への留学経験があったが、指名当時は日本から米国に渡ってプレーする環境が整っていなかったという。
◇日本勢3人目のデビュー
日本選手で史上初めてNBA選手になったのは、現在Bリーグの栃木に所属する田臥勇太(38)だ。日本でスター選手だった田臥は2004年9月、サンズでデビューした。出場機会は限られたものの、NBAの扉をこじ開けた。そして昨年、グリズリーズで出場した渡辺雄太(24)。NBAへの距離は縮まりつつあるが、実際にたどり着くのは至難の業だ。そこに今回、日本ではかつて想像もつかなかったドラフト1巡目指名の選手が登場。八村の逸材ぶりやゴンザガ大での活躍から予想されていたとはいえ、米四大スポーツでの1巡目指名の実現は、日本国内で強烈なインパクトを放った。
岡山さんは、自らの経験を踏まえながら「彼に続く選手が出てほしい。そのためには日本人の選手も海外の厳しい環境で成長することが必要」と強調。バスケットでは、国内の環境で大型の選手とマッチアップすることには限界がある。203センチの八村クラスの選手はなおさらで、米国に留学して自分と同じポジションでも同等以上の体格の選手と相対する機会が多くなった。八村は「同じくらいの体格でも体の使い方が違うなど、学ぶことは多かった」と振り返る。
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