ブラジルのような多彩な攻撃力を誇るわけではないのに、ドイツは毎回のようにW杯で上位を争う。その要因は安定感だ。そして、堅実な守備が常にチームを支える。ドイツの守りがなすすべなく崩されるような場面は極めて珍しい。最近のW杯ではクロアチアに0-3で完敗した98年大会準々決勝が思い出されるぐらいだ。それも退場が絡んでいた。
多士済々な面々が、安定した守備を維持してきた。ベッケンバウアーのような華麗なディフェンダーは希少な例だとしても、パワフルに相手の侵入を阻むタイプには事欠かない。70年代はシュバルツェンベックがベッケンバウアーとコンビを組み、80年代はフェルスター、80-90年代はコーラーやアウゲンターラー、ブッフバルトが相手攻撃陣に対抗。コーラーやフェルスターに競り勝つことは、当時の相手選手にとって大きな課題だった。70年代のW杯3大会でレギュラーだったフォクツは右サイドバックというより、手ごわいマーカー。相手のエースキラーとしてしつこくまとわりつき、74年W杯決勝ではオランダのクライフを意気消沈させた。
96年欧州選手権優勝チームのザマーは旧東ドイツ出身。ベッケンバウアーの流れをくむタイプで、積極的な攻撃参加で何度もチャンスを演出し、同年の欧州最優秀選手に輝いた。近年では高い身体能力を持つJ・ボアテンクや安定感のあるフンメルスがDFラインを締めている。
サイドバックも人材が豊富だ。左ではシュネリンガーが60-70年代の名手。伝説の名勝負となった70年W杯準決勝のイタリア戦では後半の終了間際に劇的な同点ゴールを奪い、「驚異の延長戦」を演出した。後継者はブライトナー。22歳で出場した74年W杯では大胆な攻撃参加から貴重な3ゴールを奪って優勝に貢献し、82年大会ではMF陣の中心としてチームを引っ張った。80年代のブリーゲルは元十種競技の選手。体格、体力を生かした守備と攻撃参加は迫力があった。
90年W杯ではブレーメがチームの中心選手だった。テクニックを生かした攻撃参加が持ち味で、FKなども得意。決勝ではPKで決勝点を挙げた。近年ではW杯3大会で活躍し、14年優勝チームを主将として率いたラームが豊富な運動量をバックに攻守にフル回転した。左右のサイドバックをこなして攻撃参加をする一方、守備的中盤の位置にも入った。リーダー不在を感じさせた18年W杯の戦いぶりは、ラームの貢献度を浮かび上がらせる結果になった。
右サイドでは、フォクツの後を担ったカルツにも大きな存在感があった。守備では体格を生かし、積極的な攻撃参加では左のブリーゲルらと効果的なサイド攻撃を繰り出した。
GKは70年代のマイヤー、80年代のシューマッハー、近年のカーン、ノイアーが代表的な存在か。2002年前後のカーンは確かにすごかった。しかし、同年W杯決勝で致命的なミスが出た点はマイナス材料だ。マイヤーはミスもあったが、チームを危機から救うビッグプレーが多かった。74年W杯は準決勝のポーランド戦、決勝のオランダ戦で好守を連発し、劣勢を予想された戦いで大きく貢献した。
ノイアーはGKを新たなレベルへと引き上げた。前方に大きく飛び出して相手攻撃の芽を素早く摘み取り、即座に攻撃へつなげる一方、セーブの能力にも安定感がある。現時点でのトータルの実績ではマイヤーに軍配が上がるが、GKの未来像を体現したノイアーを買う。
【ドイツの最強イレブン】
▽GK ノイアー
▽DF ラーム、ザマー、ベッケンバウアー、ブライトナー
▽MF マテウス、オベラート、F・バルター
▽FW クリンスマン、G・ミュラー、ルンメニゲ
▽控え マイヤー(GK)、コーラー、ブレーメ(DF)、クロース、ラーン(MF)、ゼーラー、クローゼ(FW)
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