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特集・地球温暖化問題

「地球温暖化」という政治問題
~米ソ対立から米欧対立への構造変化を反映~

▼発端は米国の干ばつ

 人間の産業活動や日常生活の過程で二酸化炭素(CO2)が排出され、その温室効果によって地球全体の気温が上がるとされる「地球温暖化問題」。

 CO2に温室効果があることは科学者の間では19世紀から知られていた。1958年からハワイ島のマウナロア観測所でCO2の大気中濃度の定期観測が始まり、このデータに基づいて温暖化との関係に関する研究も進められた。85年には国連環境計画(UNEP)がオーストリアのフィラハで温暖化に関する初の国際会議を開催し、「21世紀前半に地球の気温上昇が未曽有の規模で発生する可能性がある」と表明したが、当時はほとんど注目されなかった。

 人為起源のCO2による地球温暖化が破滅的な環境破壊につながるという考えが広まったのは、88年6月に米国航空宇宙局のジェームズ・ハンセン博士が連邦議会の公聴会で「地球温暖化が進んでいる」と証言したのが発端。北米ではその年、記録的な熱波による干ばつ被害が発生していたことから、米国のマスコミがハンセン証言を大きく報じ、「CO2排出」→「地球温暖化」→「環境破壊」という認識が一挙に広まった。

 同年11月には地球温暖化に関する研究を行う国際組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が設立され、12月の国連総会でIPCCの研究成果を基に気候に関する国際条約の検討を始めることが決まったが、こうした動きも当時の米国世論に後押しを受けたものだった。

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