会員限定記事会員限定記事

ギリシャ債務危機レポート

のんびりムードの陰で

 長い欧州の歴史はギリシャから説き起こされる。ドイツの歴史教科書も石器時代など先史時代の次は、古代ギリシャとなる。現代のギリシャは、国内総生産(GDP)規模では欧州連合(EU)のわずか2%と、かつての栄光はアテネの街を見下ろすパルテノン神殿などにとどめるのみ。

 しかし、そんなエーゲ海の小国の放漫財政が、欧州単一通貨ユーロの売り圧力に。金融危機の傷が今なお癒えない国際金融市場で信用不安の源となり、東京株式市場や円相場の相場材料とされている。「波乱要因」となったギリシャ経済の現状と展望を現地から報告する。(フランクフルト特派員 郄岡 秀一郎)

 どこまでが遺跡なのか判然としないアテネ市内を歩けば、この国がデフォルト(債務不履行)を取り沙汰されるほどの危機に陥っているとはとても思えない。4月なのに日に焼けてしまうほど強い日差しの下、街角のカフェや観光地は人であふれ、南欧らしいのんびりムードが漂う。道端では犬が、あまりに無防備な姿で昼寝していた。

 「毎日のように報道で債務危機が取り上げられ、ギリシャの人々も沈んでいるかと思いましたが、みな明るそうでほっとしました」―。アテネ中小製造業団体のラバニス会長とのインタビューで、記者の口から最後にそんな軽口がふとこぼれた。

 すると会長は、「昔はもっと幸せでしたが、今はさすがに皆心理的に参っています。以前来られたことがあるなら、この差はお分かりでしょう」と、やや悲しげな面持ちで話した。

 緊縮財政、景気低迷、そして失業増。ギリシャがこれからたどるのは明らかにいばらの道だ。しかしラバニス会長は、「この状態(放漫財政)を続けていけないことは政府も国民も分かっており、抜け出したいと思っている」と力強く語った。

 (肩書き・名称、年齢はいずれも2010年4月中旬に取材した当時のものです)

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ