会員限定記事会員限定記事

だからサッカー・ドイツ代表が嫌いだった~最強チームへの敬意を込めて

ブラジルから奪った「東の正横綱」

 ペレ、ガリンシャ、ジジ、ババらを擁した58年のW杯初優勝以降、世界サッカー界の東の横綱の座には常にブラジルが座ってきたと筆者は考えている。もちろん、70年から94年の優勝まで24年を要するなど、ブラジルにも苦しい時代はあった。この間、隣国のライバル、アルゼンチンとドイツが2度の優勝を遂げ、イタリアは44年ぶりに王座を奪還した。その後はフランス、スペインというW杯初優勝国が生まれるなど、短期間で見れば勢力図は常に変動している。

 しかし、たとえ優勝を逃してはいても常に優勝候補として名前が挙がるのはブラジルだった。高いレベルの個人技、分厚い攻撃を繰り出すスタイル。ブラジルが世界のサッカー界をリードし、他国が挑戦を繰り返してきたというのが58年以降の大きな構図ではなかったか。相撲に例えるなら、この間ブラジルは立ち合いの変化に活路を見いだしたこともなければ、なりふり構わず頭をつけにいったこともなかった。己の力と技術を信じ、真っ向勝負で相手を受け止めた。隣国のアルゼンチンが怒りにも似たライバル意識をたぎらせるのも、ブラジルが強大であり続けてきたからだろう。

 しかし、14年W杯を境に、東の横綱はドイツに代わったというのが筆者の見方だ。まず選手層の厚さが違う。メッシやネイマールを頼るアルゼンチンやブラジルに対し、ドイツは代表チームにいる選手と代わるなら大きく戦力が低下することはないはずだ。優れた育成システムの中から、それだけ多くの人材が次々に育ってきている。

 今後しばらくは、ドイツに他のライバル国たちが挑戦するというのが基本的な構図となるのではないだろうか。もちろん、勝負に絶対はなく、勝ち続けるには運も必要だ。サッカーはラグビーなどと比べればはるかに波乱が起きやすいスポーツ。どれだけ戦力、戦略が充実していてもドイツが常に優勝するということはあり得ない。

 現に16年欧州選手権で、ドイツは準決勝でフランスに敗れた。ただし、国の総合力1位の座はちょっとやそっとでは変わらないだろう。賢いドイツのこと、相手の状況を見てたまには頭をつけにいくこともあるはずだ。しかし、大横綱とて、慎重に勝利への確率を高める取り口に出ることもある。

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ