ビッグネームの国々と言えども、本当に上位を狙える陣容が整うのは、10年、20年に一度。だからこそ、毎回のように上位進出を果たすドイツには、ねたみ半分と分かってはいても「最後にはいつも、ドイツが勝つ」と嫌みの一つも吐きかけたい気持ちになる。
常に好成績という点で見れば、ブラジルとドイツが双璧だ。ただ、決勝進出とベスト4の進出回数でドイツが上回っていること以外にも両者の間には大きな違いがある。それはサッカーの質だ。ブラジルは国民の目が厳しく、「美しく勝つ」ことを求められる。だから、持ち前のテクニックを前面に出し、常に攻撃指向で戦う。数少ない例外が3バック(5バック)で戦った90年の代表と、守備的なMFを2人置き、攻撃をロマーリオとベベトの両FWに依存した94年の優勝チームだろう。戦後W杯に臨んだブラジル代表のうち、攻撃以上に守りを重視したのはこの2チームぐらい。他はほぼ、攻撃姿勢を前面に出して戦いに臨んだ。
圧倒的なテクニックと、攻撃指向。それでも優勝は5回だ。中盤に「黄金の4人」を擁した82年は2次リーグで姿を消し、86年は準々決勝でフランスとの美しき戦いの末に姿を消した。98年は決勝でジネディーヌ・ジダンが率いるフランスに0-3で完敗し、ロナウド、ロナウジーニョ、カカ、ロビーニョらを抱えて優勝候補の筆頭とみられた06年はフランスの守備陣に封じ込まれ、準々決勝で0-1と敗れた。より手堅く戦っていれば、優勝回数もあと1、2回は増えていた可能性はある。
ただ、それをよしとせず、美しく勝とうとするところにブラジルの良さがある。ブラジルの多彩な攻撃に翻弄されて敗れれば、負けた方は納得できる。サッカーの質では自分たちが上回っているのに、終わってみればドイツが勝ち進むことになっていたというのでは、簡単に呑み込むことができない悔しさが募り、恨みのような感情が堆積する。ブラジルやオランダが多くのファンを楽しませ、尊敬されるのは、例外的な時期を除いて攻撃を指向し続けてきたからだ。
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