決してイタリアが嫌いでないのは、ドイツに強いことばかりが理由ではない。この国はダメなときはだらしなくずっこける。それが何とも人間臭い。戦前の34、38年W杯を連覇した後、次に頂点に立つ82年まで実に44年。この間の8大会は予選敗退1回、1次リーグ敗退5回という「横綱」らしからぬ体たらく。06年W杯で4度目の王座に就いた後も10、14年と1次リーグで姿を消している。
66年大会では1次リーグ最終戦で北朝鮮に敗れて敗退。ファンからトマトを投げつけられたという。世界トップリーグの一つで活躍する選手で固めたトッププロ集団が、選手の名前も知られていない極東のチームに敗れたのだから一大事だ。ただ、この敗戦が北朝鮮の健闘というページを世界サッカー史に刻み込み、準々決勝でのポルトガル5-3北朝鮮という名勝負、エウゼビオの1試合4ゴールという名場面にもつながっていく。
強豪が毎回、挑戦者を駆逐するばかりでは面白くないし、新たな展望も開けない。たまには強豪が波乱の犠牲者となり、挑戦者や新興勢力に花を持たせることも競技の人気や発展の上では重要なことなのだ。
若い年代のファンのみなさんはフランスやオランダを伝統の強豪国と見ているかもしれないが、両国ともコンスタントに好成績を収めてきたわけではない。第1回大会から出場してきたフランスが初めてインパクトを残したのが58年大会(3位)。しかし、62年から78年の5大会中3大会は予選落ちを喫し、4位、3位と好成績を挙げた82、86年の後には90、94年大会で予選敗退を繰り返した。オランダは74年大会で旋風を巻き起こすまでW杯の実績はほぼゼロ。74、78年と連続で準優勝した後は82、86年と本大会に出られず、02、18年大会も予選落ちしている。
最近の低調な戦いで、もはや二流の上程度まで身を落とした感のあるイングランドは74、78年大会に出られず、94年大会も予選落ちしている。まだ数多くのスター選手が健在だった74年大会の予選落ちは衝撃だった。敗れた相手のポーランドは本大会で3位に。W杯が16チームで争われていた時代の厳しさだ。バンクスが交通事故でけがをしていなければ予選落ちはあり得なかったが…。
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