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だからサッカー・ドイツ代表が嫌いだった~最強チームへの敬意を込めて

上位進出支えるPK戦の強さ

 準決勝ではイングランドをPK戦の末に退けたわけだが、そもそもPK戦は日程上、再試合が不可能なことに伴い、勝ち進むチームを決めるためにやむなく実施している制度であり、サッカーの試合とは直接関係がない。PK戦で決着した試合の正式な勝敗は「引き分け」。PK戦で勝っても正式には勝利ではないし、PK戦で屈しても負けではない。

 確かに、どんな重要なトーナメントでもPK戦が導入されている現状下では、PK戦に備えて準備することは重要だし、14年W杯準々決勝のコスタリカ戦で、オランダがPK戦突入を見越して延長の終了間際にGKを代えたように、入念な対策も戦略の一つだろう。ただ、しょせんはくじ引きのようなもの。「抽選で決めるよりはまだ納得がいく」ということで導入された制度にすぎない。

 ただ、82年大会で初めて実施されて以来、得意な国と苦手な国が明確になっているのは確かだ。14年W杯までの段階でドイツは4戦全勝。アルゼンチンは06年大会準々決勝でドイツに屈したものの3勝1敗の高勝率を誇る。06年大会決勝でフランスを退けて4度目の優勝を遂げたイタリアも、通算では1勝3敗と苦手。3戦全敗のイングランドは自国開催だった96年欧州選手権でも準決勝でドイツに屈しており、PK戦に勝利する姿がなかなか想像できない。現在の選手たちもPK戦で姿を消す自国代表選手の姿が幼少期から脳裏に刻まれており、「伝統の病」として継承されてしまっている感じだ。

 イングランドは大きな大会の前、心理カウンセラーを招いてPK戦に対する指導を受けるなど、しっかりした対策が必要だろう。今やどんなスポーツでもメンタルトレーナーによる指導は常識で、イングランド協会がそうした措置を怠っているとすれば、無能というほかない。18年W杯でチームを率いるサウスゲート監督はPK戦の苦手意識の克服に向け、特別な練習を予定しているという。その効果はいかに。

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