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だからサッカー・ドイツ代表が嫌いだった~最強チームへの敬意を込めて

やはり同じ結果に

 しかし、それから2時間弱が経過すると、再び「またドイツかよ」と舌打ちする結果となった。後半15分、西ドイツのブレーメが放ったFKがポール・パーカーの体に当たってはね上がると、これが微妙なカーブを描きながらGKピーター・シルトンの手の先をすり抜けてネットを揺らす。これもゴードン・バンクスなら、はじき出していただろう。シルトンもイングランドが世界に誇る偉大なGKだったが、チームの命運を分ける非常に重要な場面でいくつか残念なプレーがあった。そこがバンクスとの決定的で、埋めがたい違いだ。

 必死に反撃するイングランドは後半35分、パーカーのクロスの処理を西ドイツDF陣がもたついたところを、エースFWリネカーが冷静に決めて同点に追いついた。86年W杯で得点王に輝いたリネカーは準々決勝のカメルーン戦でもプレッシャーのかかる場面で同点、勝ち越しのPKを確実に決めている。大事な場面でしっかりと結果を出す勝負度胸の良さには、本当に頭が下がる。

 延長戦ではともに大きなチャンスを生かせず、1-1のまま終了し、PK戦に突入する。こうなると、もはやイングランドが勝ち残るイメージはなかった。案の定、4人がしっかり決めた西ドイツに対し、イングランドは2人が失敗。サッカーの母国にとって2度目となる主要大会での決勝進出は、またも幻となった。イングランドは94年のW杯で予選落ち。リネカー、ガスコイン、プラット、ジョン・バーンズ、クリス・ワドルらにとって90年が最後のW杯となった。

 期待が膨らんでいただけに、筆者にとっても痛恨の敗戦。あまりの落胆で3位決定戦(対イタリア)の取材をパスして、買い物とやけ食いでストレスを発散した。バリで行われた3位決定戦をしっかり取材した某フリーカメラマンには「お前なんか、もうイングランドファンじゃねえよ」という厳しいお言葉をいただいたが…。

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