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だからサッカー・ドイツ代表が嫌いだった~最強チームへの敬意を込めて

オランダとの激闘

 86年W杯で準優勝した2年後、地元で開催した88年欧州選手権で、西ドイツは4強にとどまった。オランダとの準決勝。1-1で迎えた後半43分、後方からのヤン・ボウターズのパスをエースFWマルコ・ファンバステンに決められ、1-2で敗れた。開催国として当然優勝を狙っていただけに、苦い敗戦になった。

 一方のオランダにとっては74年W杯から14年目にようやく果たした雪辱。チームはファンバステン、ルート・フリット、フランク・ライカールト、ロナルド・クーマンと新たな世代が中心となっていたが、監督は14年前と同じリヌス・ミケルス。決勝でソ連を破って頂点に立ったオランダにとって、実に意義深い優勝となった。

 ただ、2年後の90年W杯では、再びドイツの軍門に下ることになる。87年の欧州最優秀選手フリット、88、89年の欧州最優秀選手ファンバステンを両輪に、オランダは世界王者への期待を背負ってイタリアに乗り込んだ。ただ、代表チームの内部がゴタゴタするのも、この国の伝統。激しいタックルの標的にされたファンバステンが完調とは言えないこともあり、チームは1次リーグで3分け、3位で辛うじて16強に進出した。

 一方の西ドイツは82、86年W杯の準優勝チームより、数段勢いを感じさせるチームだった。ドラガン・ストイコビッチらを擁するユーゴスラビアを第1戦で4-1と粉砕。中盤の要として風格を増したマテウスが、ドリブルから鮮やかなミドルシュートを決めるなどキレキレの状態。中盤ではテクニックのあるトーマス・へスラーやピエール・リトバルスキーが絡み、フェラーと組む2トップの一角には気鋭のストライカー、ユルゲン・クリンスマンが成長。右からトーマス・ベルトルト、左からアンドレアス・ブレーメが攻め上がり、久々に攻撃マインドの強いチームが出来上がった。

 2年前の欧州選手権準決勝の再現となった西ドイツ-オランダは、オランダが予想外の1次リーグ3位通過となったことで、決勝トーナメント1回戦で早々に実現することになった。優勝候補同士の激突は、波乱含みの展開となった。西ドイツのFWフェラーとオランダのDFライカールトが小競り合いを続け、つばを吐いたライカールトにフェラーも応酬して前半22分に両者が退場となった。

 激闘の歴史を持つ両チームの激しいライバル意識を象徴するアクシデントは、西ドイツに味方した。守備の中心選手を欠いてバランスが崩れたオランダに対し、西ドイツは広くなったスペースにクリンスマンが積極的に侵入することでチャンスを拡大した。後半6分、クリンスマンが先制点を奪うと、同37分にブレーメがうまいシュートで加点。オランダの反撃をPKによる1点に抑え、2年前の雪辱を果たした。

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