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だからサッカー・ドイツ代表が嫌いだった~最強チームへの敬意を込めて

絶大だったホームの利

 ただ、西ドイツにとって何より大きかったのは、大会で最も優れたサッカーを展開したオランダに対し、ホームで戦えたということだろう。決勝の会場ミュンヘンは、ベッケンバウアー、ミュラー、MFウリ・ヘーネス、DFブライトナー、ゲオルク・シュバルツェンベック、GKゼップ・マイヤーらバイエルン・ミュンヘン勢にとって、普段からホームとしている競技場。このアドバンテージなしに勝利は考えられなかっただろう。もし開催地がドイツ以外であれば、オランダが3-1ぐらいで勝っていたのではないだろうか。東ドイツ戦の負けが有利にはたらいたことといい、ポーランド戦のピッチがぬかるんでいたことといい、ドイツにはかなりのツキがあった。

 当時、日本という少しばかり「特殊な」環境下でドイツを応援していた筆者は、日本で初めてとなったW杯決勝の生中継を見ながら、西ドイツの優勝を喜んでいた。試合の放送はおろか、ニュースでハイライトの映像が流れることもほとんどなかったため、この時点では2次リーグまでのオランダの戦いぶりは見ておらず、オランダがどれほど素晴らしいチームだったかを知らなかった。このチームは後世に大きな影響を及ぼす斬新な戦術を誇り、クライフという歴史的な名手がそれをリードした。54年のハンガリーや58、70、82年のブラジルなどと並ぶ「サッカー史の中で宝物のようなチーム」の一つだ。後で考えれば、やはりオランダが戴冠するべき大会だったと強く思う。

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