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だからサッカー・ドイツ代表が嫌いだった~最強チームへの敬意を込めて

2位通過が幸い

 1次リーグ最終戦でデンマークと対戦する前に、ベッケンバウアー監督が「デンマークは非常に原始的なチームだ」と言い放った言葉が忘れられない。デンマークの美しい攻撃サッカーに魅了されていた筆者は、非常に腹が立った。

 デンマークは決勝トーナメント1回戦でスペインに1-5で屈して敗退する。自らのペースで試合を進めていながら、前半終了間際にミスから同点ゴールを献上。大きな試合の経験不足を露呈して次第に浮き足立ち、後半に失点を重ねて思わぬ大敗を喫した。後になって考えてみれば、豪快な攻めの裏に脇の甘さが潜んでいた。ベッケンバウアーもそのあたりの欠点を見抜いていたのかもしれない。

 ただ、デンマーク-西ドイツ戦はデンマークが2-0で快勝。弱い時代を支え、欧州最優秀選手に輝いたこともある国民的英雄アラン・シモンセンを後半途中から投入し、晴れの舞台を踏ませたほど余裕のある試合運びだった。試合前のベッケンバウアー発言は、直接対決の結果を見ても、筆者にとっては不快感ばかりが残るものだった。

 しかし、結果的には2位で通過したことが西ドイツには幸いする。1位で抜けていれば、FWエミリオ・ブトラゲーニョ、MFミッチェルを軸に調子を上げてきたスペインに16強対決で屈していたかもしれない。しかし、2位通過となったことで西ドイツの決勝トーナメントの相手はモロッコ、メキシコと、W杯で4強以上の実績を持たない相手が続くことになる。

 2試合とも決め手を欠き、苦しい戦いに。モロッコ戦は終了3分前に相手の壁の不備を突き、マテウスが長いFKを流し込んで1-0で辛勝。準々決勝でも開催国メキシコの攻めをしのぎ、0-0の末のPK戦を制して4強に進んだ。ベスト4に残ったチーム中、最も楽な山を勝ち上がった幸運は否定しようがなかった。

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