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だからサッカー・ドイツ代表が嫌いだった~最強チームへの敬意を込めて

フランスとの激闘

 無気力な談合試合を演じた「罪の意識」も影響したのか、オーストリアは2次リーグで失速。フランスに敗れ、北アイルランドとも引き分けて姿を消した。一方、たくましいドイツは受けた批判などどこ吹く風。イングランド、スペインとのグループをしぶとく勝ち抜いて4強に進出。準決勝に臨むことになった。そしてこの戦いが、第2のスキャンダルを呼ぶことになる。

 準決勝の相手はフランスだった。レイモン・コパ、ジュスト・フォンテーヌらの活躍により58年W杯で3位に入ったフランスは、その後のW杯5大会で3度の予選敗退。なかなか国際舞台でインパクトを残せずにいた。

 しかし、中盤にミシェル・プラティニというエースが出現。82年W杯ではプラティニとコンビを組む中盤にジャン・ティガナ、アラン・ジレスという小柄なテクニシャンが加わり、質の高いパス交換を生かした魅力的なチームをつくり上げてきた。リベロのマリウス・トレゾール、マヌエル・アモロス、マキシム・ボッシらDF陣にも攻撃指向の選手が多く、ジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾの「黄金の4人のMF」を軸に大会前半の主役となったブラジルとともに娯楽性の高いサッカーを展開。イングランドに完敗した初戦のショックから立ち直り、大会後半に調子を上げて4強に進んできた。

 西ドイツ-フランスの準決勝はW杯史に残る名勝負となった。ピエール・リトバルスキーのゴールで先制した西ドイツに対し、フランスもプラティニがPKを決めて前半を1-1で折り返す。同点のまま突入した延長では前半2分にCKからの好機にトレゾールが鮮やかなボレーシュートを決めて勝ち越したフランスが6分後にもジレスの好シュートで加点。3-1として大きく優位に立った。

 しかし、うぶなフランスはなおも攻めに出た。歴戦の西ドイツはその脇の甘さを突く。故障を抱えるため途中出場となったエースFWのカールハインツ・ルンメニゲがクロスを押し込んで1点差に迫ると、クラウス・フィッシャーが延長後半3分に得意のオーバーヘッドシュートを決めて追いついた。

 勝負はW杯史上初のPK戦へ。ウリ・シュティーリケが先に失敗して苦境に立ったかに見えた西ドイツは、ここでもフランスから2度の失敗を誘って立場を逆転。最後はルベッシュが決めて歓喜の決勝進出を果たした。好試合が多かったこの大会の中でも、イタリアが本命ブラジルを3-2で破った一戦に迫る、屈指の戦いだった。

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