関係者やファンの間にドイツ・サッカーの信者が氾濫していた当時の日本で、われわれ少年ファンも、知らず知らずのうちに、「ドイツ・サッカー=善」というようなイメージを抱き、「洗脳」される結果になった。
これは、高校あたりまで筆者が巨人ファンだった状況と非常に似ている。当時の(関東の)野球放送はテレビもラジオも巨人戦がほとんど。野球に興味を持った子どもはとりあえず巨人戦を見るしかない。親族に他チームのファンがいて、いろいろ教えてくれれば視野も広がるが、そうした環境にいなければ巨人以外に選択肢がない状況が続いていく。結果、自然に巨人ファンになってしまう。
成長するに従って巨人に対する疑問が少しずつ膨らんでいた筆者にとって、一気に「改宗」の転機となったのが、78年のドラフト会議で発生した「江川事件」だった。巨人入りを熱望する江川卓投手を獲得するため、巨人は子どもだましのようなルール解釈で、江川と契約したと主張した。これが悪質なルール違反、横暴であることは誰の目にも明らかだった。しかも、ドラフトで江川との交渉権を得た阪神に対し、当時のコミッショナーは「強い要望」という形によってトレードで巨人に移籍させるよう求めた。
球界トップも巻き込んだあまりに理不尽な動きに、筆者の中で巨人への愛情と信頼は崩れ去った。巨人という球団の本質を見た思いがして長年の「恋人」への愛情は一気に冷め、わずかな期間で「アンチ巨人」への転向を果たしたのだった。
新着
会員限定