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うつ病を減らすために職場でできることは?
 現代うつ病Q&A~メンタルケアの最前線から~

 ―うつ病を予防することは可能なのでしょうか。

 完全に予防するのは不可能です。「抑うつ気分」というのは感情の一つですから、それが高じて不可逆的になったものがうつ病だと考えれば、ゼロにするのはどう考えても無理です。ただ、発病を少なくする努力はしていかなくてはいけません。

 ―うつ病を減らすために、職場でできることを教えてください。

 「メンタルヘルス」という言葉に集約されてしまいますが、まず第一歩は、うつ病に対する理解を深めることです。もちろん、職場でメンタルヘルスの講習を1回やったから効果が出るというようなことはありません。経営者や管理職が、企業の生産性を落とさないという観点からメンタルヘルスの重要性を理解して、根気よく対策に取り組むことが必要です。

 ―メンタルヘルスは企業の業績にも関わるということですね。

 見た目の業績を上げることだけにとらわれている企業は、メンタル的に不調な社員が多く、結果的に効率を落としていると思います。社内での競争が過酷で、「負けたらおしまい」といった雰囲気の企業も同じです。いずれにせよ、単一の価値観しか通用しない社風は、社員に強いストレスを与えます。私は様々な業種の会社の産業医を頼まれていますが、つくづくそう感じます。

 【唐渡雅行氏(とわたり・まさゆき)】総合内科、精神科、心療内科などの専門医。1961年、徳島県生まれ。名古屋大医学部卒。内科医として病院勤務の後、同大大学院で白血病の研究に取り組み、1992年から3年間、英国がん研究所に留学した。帰国後、名古屋大医学部第一内科で勤務したが、「うつ病患者が安心して受けられる医療の受け皿が少ない」との危機感から精神医療の世界に転じ、2004年に「とわたり内科・心療内科」を開設。内科専門医としての経験を生かし、患者の心と体を統合的に診察し続けている。著書に「うつ病診療最前線」(時事通信社)などがある。

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