8月6日、再びガザを訪れた。イスラエルとハマスが72時間停戦することで初めて合意し、実際に停戦が発効して2日目だった。戦闘開始から30日目。イスラエル軍の地上部隊が撤収した直後で、7月に見た風景とのあまりの変わりように言葉を失った。
ハマスの検問所は無残に破壊され、仮設のプレハブ小屋でパスポートチェックが行われた。
イスラエルとハマスが激しく交戦したガザ市東郊シェジャイヤ地区。イスラエルとの境界近くは、地震か津波にでも襲われたような壊滅状態だった。ぽつぽつと民家が残っている場所を歩いていると、中年のパレスチナ人女性が駆け寄ってきた。
「待っていたのよ」。主婦のジャマラット・セルサウィさん(50)は、久しぶりに戻った自宅の惨状を目の当たりにし、誰かに訴えたいのだという。かろうじて骨格が残っている3階建ての住居の内部に案内され、どれだけ家財道具が破壊されたか身振り手振りも交えながら説明を受けた。
「私たちは動物ではない。尊厳を持って暮らしたい」とセルサウィさんは憤った。「尊厳」という言葉は、取材で出会った多くの住民が口にしていた。「自分たちもほかの国の人々と同じように仕事や教育の機会を得て、平和に暮らしたいだけだ」と異口同音に唱える。
セルサウィさんは、子供たちが見つけてきたイスラエル軍の照明弾の残骸を取り上げると、地面にたたき付けた。「イスラエルがこの土地から出ていくまでは永遠に戦い続ける」。イスラエルの存在自体を認めない立場だ。
別の場所に向かうため車に乗り込むと、セルサウィさんが再び走ってきた。車の窓からビニール袋を渡された。中には紙皿いっぱいのナツメヤシとビスケット。「持っていけ」と引かない。ガザの人々のたくましさと温かさを感じずにはいられなかった。
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